東の剣士 -14
しばらく息吹の練習をすると、コツがつかめてきたのか失敗することもなくなってきた。ジャヴさんも、苦戦しながら身に着けているようだ。もともと力の強い人だから、この技を身につければ恩恵も大きいだろう。
「色々とありがとうございました」
「こちらこそ、恩を返せたのなら嬉しいよ」
「うむうむ」
「こら、ややこしくなったのは、若のせいだろう」
ウさんが、胸を張っている志位さんの腰を棒きれで軽く叩く。
「皆さんは、この街には、しばらく滞在されるんですか」
「ああ。アーツ・ホルダーになるという目的は果たしたが、せっかく田舎からやってきたんだ。少しぶらぶらさせてもらうよ」
「剣精にリベンジをしなくてはいけないですしね」
「そうだな」
「剣精に・・・マジかよ」
ジャヴさんは呆れたように言う。だが、志位さん、ウさん、サさんの目は真剣だ。
「自分で言うのもなんだが、あれほど格上の相手に戦える機会はそうないからな。しばらく作戦を練ってから、また挑みたい。貴重な経験だ」
「少なくとも、書類の発行まではこの辺りにいますよ」
書類の発行・・・そんなものがあるのか。僕はアーツ審査に内定?しているものの、受かったその後についてよく知らなかった。
そんなそぶりは見せないものの、彼らは名誉あるアーツ・ホルダーとなったのだ。国に帰れば、英雄扱いなのだろうか。
「そうだ、レイル。この辺でうまいもの教えてくれ」
唐突に、志位さんが目を輝かせていう。
「美味しいものですか・・・。僕もこの辺はそれほど詳しいわけじゃないんですよ。ジャヴさんの方が詳しいと思いますよ」
「えー、いやだレイルがいい」
即答だ。
「ふ・・・こんなちびっこには、俺様のスパイシーな魅力はわからないかな」
平然を装っているジャヴさんだが、額に青筋が見えている。
「ちびっことはなんだ! これでも僕は18だぞ!」
「えっそうなの・・・俺はてっきり、レイルと同い年くらいかそれより下かと・・・なぁ、レイル」
口には出さなかったが、僕もそう思っていた。ちなみに、僕が16(の設定の14)、ジャヴさんは21歳になる(ジャヴさんは僕の本当の年齢を知っている)。
志位さんは歯をギリギリと立てて、威嚇するような表情をする。この二人は、両方とも歯に衣着せぬ物言いなので、すぐに喧嘩になるような気がする。
「ま、まぁ、こちらの人間は若く見えるようですからね」
サさんが、それとなくフォローする。
「それにしたって・・・さすがにこいつは、あんたらの国でも幼く見える方だろう?」
「いや、まぁ・・・その・・・」
ジャヴさんは、そのフォローを台無しにする。サさんも、嘘は苦手のようだ。
「ギイイ!」
「うわ! 噛みついた!」
「若! 無作法です!」
後に、僕は彼らのアーツを目撃することになる。
命を燃やす強くて美しく、そして脆い技が、散らされるところも。