表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 東の剣士
131/200

東の剣士 -13

ウさんが前に踏み出すと、手で円を作ってして前に突き出す。


「この技のコツは、息の吸い方ではなく、息の吐き方だ」

「吐き方・・・」

「特に呼吸が苦しい時ほど、人は呼吸が早く浅くなる。だが、一度胸の中を空にした方が、新しい空気を取り入れられるんだ。論より証拠だ。やってみよう」


ウさんは、深く息を吐きだした。

僕たちが考えるよりもさらに長く、息を吐き続ける。みるみるうちに胸が引き、体が細くなっていくように見える。やがて、息の音が変わり、口から吐き出される音はどんどん細くなっていく。


「お、おい・・・大丈夫か?」


ジャヴさんが心配して声を出す。


「心配いりませんよ」


サさんが、それを制する。志位さんも、腕を組んでみている。

ウさんの元々の肺活量も多いのだろうが、人間の息がここまで吐けるのかと驚かされる。


「そろそろですよ」


サさんの言葉を待っていたかのように、ウさんは大きく息を吸った。細くなった体に、文字通り息が吹き込まれていく。


「ハッ!」


脇を閉めて気合いを入れると、ピシリと空気が張った。ウさんの体にみるみるマナが満ちていく。


「おお・・・」


僕とジャヴさんに、思わず感嘆の声が上がる。ウさんがわかりやすく全身にマナを出しているのだろうが、全身から立ち上る輝かしいばかりのマナの気炎には、人を圧倒するものがある。


「マナを消しつつ息を吐き、一気に息を吸うタイミングで再びマナを全身に巡らせる。キ・・・いや、マナの消費は多いが、これで使えるマナの量は一時的に跳ね上がる」

「限界まで出し切ったと思った後の、最後の一太刀が出せるぞ」


志位さんが、得意げに補足する。


「若は、それでよく倒れるでしょうに」

「うぐ」


もう一度息を吐くと、ウさんのマナは落ち着いていく。


「では、実際にやってみるといい。マナの切り替えに少しコツがいると思うが・・・何度かやれば、コツがつかめると思うぜ」

「はい」

「おう」


僕とジャヴさんは、同時に息を吐き始める。


「普段の限界を超えて吐き続けるんだ。胸から出し終わったら、次は腹筋を使って腹の中から出し切れ」


言われた通り、口をすぼめて肺腑から空気を絞り出す。ウさんの言う通り、最後は腹から絞り出すような感覚だった。


「少し止めて・・・マナは切ったな。では、息を吸い終わったらマナを呼び出せ!」


一気に肺に空気が入るのと同時に、体のマナを呼び出す。

途端に、背中を押されるような強い揺れを感じる。意識しないうちに、体が前かがみになっていく。


「これは・・・?」

「レイル氏はできたな。体が前かがみになるのは、腹筋に力が入りすぎたんだな」


そう言われて、僕は姿勢を正す。確かに、体に一時的にマナがみなぎっているのがわかる。


「一発でできるとは、飲み込みが早いな。素直でいいことだ」

「うおおおらあああああああ!」


隣にいたジャヴさんのほうから怒号のような声が聞こえる。


「あ、ジャヴさんもできたんですか」

「いや、あれは声でごまかしているだけだな」

「・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ