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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 東の剣士
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東の剣士 -12

夕方前。夜勤としては早起きをした僕とジャヴさんは、あくびを噛み殺しながら約束通り神殿の前で待っていた。


「ジャヴさんも習うんですね」

「おうよ。お前ばっかり強くなられてたまるかっての」

「技とか強くなるとか、あんまり興味がないのかと思ってました」

「そんなことはないぜ。強くなるに越したことはないからな」

「近距離も鍛える気になったんですか」

「うーん、近距離って怖いから苦手だけどな」


遠くから手斧を高速で投げてくる男の方が、よっぽど怖いと思うのだが・・・。

そんな話をしていると、例の三人組が神殿の階段を降りてきた。


「ぬ・・・あれは・・・」


ジャヴさんが、鋭い眼光をその目に光らせる。


「どうしたんですか」

「あいつら・・・落ちたな」

「え、試験にですか。わかるんですか」

「俺クラスになると、審査に落ちた人間のやるせない表情がよーくわかるようになるんだ」


どんな経緯を経ると、そのクラスになるのだろうか・・・などと考えたが、口にしないでおいた。


「おーい、君たちー!」


ジャヴさんは大きな声を出して手を振って、嬉しそうに声をかける。

向こうもこちらに気が付いたようで、弱弱しく手を上げる。確かに、元気がない。


「けちょんけちょんにされたんだねっ!」

「・・・お、おお。待たせたようだな」

「いいってことさ。大丈夫、そういうこともあるよ! さあ、悲しい気持ちがあれば、受け止めてあげるよ。次の試験に生かしてほしいんだ!」


目を光らせるジャヴさんを、ウさんは片手を上げて制する。


「ん、言っておくが試験には受かったぞ」

「えっ」


僕とジャヴさんが、同時に声を上げて驚く。いつのまにか僕もジャヴさんの言葉を信じてしまっていた。


「でも、妙に意気消沈しているように見えますけど」

「ああ。アーツは受かったが・・・結局、一太刀お見舞いすることもできなかった」

「世間は広いのだと知りました」

「僕、自信あったのに・・・」


同じ首の角度で、並んでうなだれる三人に、僕はどう声をかけていいのかわからなかった。


「あの、またの機会でもいいですよ」

「いや、そういうわけにはいかん。我々は異国の人間だから、貸しは早めに返さないといかん」


そう答えたのは、ウさんだった。


「よし、では少し人気のないところへ行こうか」

「はい」


僕とジャヴさん、そして一行は、町はずれの空き地に移動すると、ウさんを前にして二人で並ぶ。


「誤解のないように言っておくが、今から教えるのは呼吸回復法と思ってくれればいいだろう。キは使えるな?」

「キ?」

「ウ、この国では、マナといいます」

「お、そうだった。では、マナを体に集中してみてくれ」


僕たちは、言われたとおりに体にまんべんなくマナを張り巡らせる。


「うむ、やはりレイルの方が筋がいいな」

「やはりってなんだよ!」


ジャヴさんが抗議の声を上げるが、拾われずに流される。


「この技は、原理としてはシンプルだ。まずは俺がやってみせよう」

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