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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第二章 傷が癒えるまで
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傷が癒えるまで -2

おおむね、僕の入院生活は波風なく過ぎていった。弟の安否は依然として不明だったが、僕が現地の地形の説明をするなどして、捜索は続いている。居ても立っても居られない気持ちにはなるが、部屋を抜け出そうとすると、見計らったかのようにドアの向こうでリンダさんが仁王立ちをしていて、隙がない。

そうして、僕の入院生活が一週間を超えた時、「ずっと病院じゃ、息が詰まるでしょ」ということで、身の回りの物を買うついでに、ララベルさんが街を案内してくれることになった。

リンダさんに門限をつけられたものの、久しぶりの外出だ。初めて見る首都の様子も、気になるところだった。


当日の朝。霧の匂いのする路傍で、僕を待っていたのは、動きやすいラフな私服のララベルさん・・・と、腕を組んでこちらを見下ろす、長身のモヒカン男だった。


「おうおう、新入り。随分色々な手順をスキップしてるじゃねーか。山育ちは、朝に起きるのも、女に手を出すのも早いのか?」


そういうと、ばね仕掛けのように首を跳ね上げ、ああん? と見栄を切る。陰で手を合わせているララベルさんを見ると、どうやらどこかで噂を聞きつけて着いてきたようだ。

彼の名前はジャヴ。彼もまた、馬車の中にいたメンバーで、手斧を武器にして戦うらしい。


「ごめんね、なんか変なのついてきちゃった・・・」

「変なのってなんだよ!俺は、社会の順序ってもんを教えに来てやったんだよ!」

「うるさいうるさい!だいたいあんた、夜勤なんじゃないの?」

「夜勤だよおおお!眠いのをこらえてきてるんだよおおお!」

「ちょっと!恥ずかしいから大きな声出さないでよ!」


騒がしい・・・が、表裏のない性格のようだ。山の暮らしでは、こんなに大きな声を上げる人間はいなかったので、少し驚いた。「見た目はアレだが、悪いやつじゃない」と、コボル警備長は言っていたが、どうやら、的を得ているようだ。夜勤帰りと言っていたが、背には手斧を無数に背負っている。これが彼の出勤スタイルなのだろう。モヒカンと手斧のせいで、どう見ても警備隊というよりは山賊なのだが。

そんなわけで、闖入者をえた3人で、僕たちは買い物へでかけることになった。


「お前のために言っておくけどな、ララベルは5人兄弟の長女で、異様に面倒見がいいってだけだぞ」


ジャヴさんが、肩を組んできて小声で離す。


「だからな、その面倒見の良さを勘違いして高ぶっちゃうと、ろくなことに・・・間違って惚れたりすると・・・う、ううう・・・おろろーん」


今度は、突然泣き出した。


「あの、ララベルさん、この人大丈夫なんですか・・・」

「ごめんね・・・。夜勤明けは変なテンションなんだ。そのうち歩きながら寝だすから、そうしたら置いていこうね」

「えっ・・・は、はい」

「あーあ、せっかくのデートなのにね」

「おデート! 今、おデートって言ったか、おい!」

「「お」は、つけてないよ・・・」


こんな感じで進んでいくと、街の人たちにも声をかけられる。


「ララベル、今度お裁縫教えて!」

「いい梨が入ったんだ、解呪したら教えるから、今度寄ってってよ!」

「ジャヴ、今日もうるさいな!街の平和を乱すんじゃないぞ!」

「その子は、新人かい?可哀そうに、怪我をしてるじゃないか」


警備団という特性上か、団員の顔は広いようだ。ララベルさんとジャヴさんも、大抵の街の人間の顔を覚えているようで、自然に会話をかえす。


買い物や名所案内をしながら進み、街の中央の噴水につくと、軍服を着て部下を連れた痩せ型の男が、こちらを睨むように、見ていた。目線が合うと、ブーツを鳴らしてこちらへ近づいてくる。


「レイルだな。私の名前は、カール。お前に聞きたいことがある」

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