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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 東の剣士
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東の剣士 -10

「なんだよ。俺のデータは結構正確なんだぜ」

「・・・ちなみに、この辺りには美人の女性が経営している宿屋は何件くらいあるんですか」

「三軒だな」

(多いな・・・)


そんなに、美人の女性が宿を経営しているのだろうかと、いぶかしむ。


「では、この辺りの宿屋の数は?」

「四軒だな」

「・・・ってことは、残りの一軒が志位さんの宿じゃないですか!」

「ハッ! やだ・・・この子頭いい・・・」

「・・・」

「おい、漫才なら後にしてくれ! 僕の命がかかってるんだ」


僕たちは、ジャヴさんを先頭にして、消去法の示す宿へ向かって走り始めた。


「あ! この石、見覚えがある!」

「この荷車、着た時にもあった! 近づいている気がする!」


近づいているのかいないのか、志位さんの言葉ではよくわからなかったが、ジャヴさんの走りに迷いはない。


「俺の頭にあるのは、緑の煉瓦で、目の前に青物屋がある宿だが、それで合ってるか?」

「おお、たぶん、それな気がする!」

「・・・」


全く期待がもてない。

一緒に走って分かったのだが、志位さんの身体能力は脚力、身のこなし、マナの使い方など、かなり鍛えられたものを持っている。全力疾走に近いスピードにも、難なくついてきているし、身のこなしが軽い。

むしろ、特訓が終わったばかりの僕と、夜勤明けのジャヴさんの方が息を切らしている。


「宿に着く前に、二人に言っておきたいことがある」

「ん?」

「なんでしょう」

「短い間だったが、世話になった・・・。万が一、ウとサが起きていたら、僕を置いて逃げてくれ」

「そ、そんなにおっかないやつらなのか」

「僕はもう、辞世の句を作っているところだ」

「ええ・・・!?」

「あいつらは鬼のような人間だ。控えめに言って兎を絞め殺す大蛇のような奴らだ。じわじわと、ゆっくりと獲物の骨を折っ」

「誰が大蛇ですか」

「ひゃああ!」


今のは、ジャヴさんの悲鳴だ。志位さんは、顔面蒼白で顔の前で手をパタパタとしている。いつの間にか、僕の背後に昨日見た長髪の男性が回り込んでいた。

足音もせず、マナが飛ぶ気配も感じなかった。野生動物の方が、まだ気づきやすい。


「これは・・・」

「違う! この人たちは、僕を連れてここまで着てくれたんだ」

「見ればわかります。・・・お二人とも、ありがとうございました」

「いえ、仕事ですから。それより、志位さんを多めにみてあげてくださいね」

「ああ。ちびりそうになってるぜ」

「教育を兼ねてますので、悪しからず。それより、若」

「あうあう」


志位さんは、涙目になりながら長髪の男と目を合わせる。


「志位の名を明かしたのですか」

「だ、だって向こうが名乗ったから・・・」

「そうですか・・・」

「まぁ、うちの若に隠し事なんて高度なことはできないってことだな」


声をした方を振り向くと、もう一人の色黒の男が立っていた。走り回ったのか、額に汗をかいている。

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