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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 東の剣士
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東の剣士 -9

「その面妖な髪型の男は・・・歌舞伎者のたぐいか」

「この国の成人は、皆この髪型になるんだ」

「おお・・・知らなんだ」

「何が人見知りですか! 堂々と嘘言ってるじゃないですか!」

「身を守るためには、しょうがないんだ」

「嘘なのか! すっかり騙されるところだったぞ」

「ええ・・・。あぁ、そうだ。僕の名前はレイルです。まずは宿に戻るところを目指しましょう」

「レイルか・・・。名乗られたのなら、僕も名乗らなければならないな。志位と申す」


そういうと、志位さんは頭を下げた。深いお辞儀からは、育ちの良さを感じる。

改めて表情を見るが、つくづく年齢がわからない。背は僕よりも低く、黒髪を束ねている。華奢なように見えるが、ぶれない体軸や姿勢の良さは鍛えられた人のそれだ。


「それでは、もう少し宿の特徴を聞いていいですか」

「うーん・・・宿の前に猫がいた」

「それは、さっき聞きました」

「うーん、そこの宿の女将がパンをくれたな。そのパンが美味しくて、今朝は街のパン屋に挑戦したくなったのだ」

「そんで迷ったと」

「ぐ・・・」

「ジャヴさん!」


僕は容赦ない茶々をたしなめる。


「しかし、参ったな・・・宿の特徴がわからないや」


僕は、頭を抱える。動的なシンボルばかりで、ランドマークとなるものが出てこない。


「いや、諦めるのはまだ早い。志位さんとやら、その女将の特徴をもう少し詳しく教えてくれないか」

「女将の? そうだな。僕より背が高く・・・」

「ふむふむ」

「優しそうな人で、パンをくれて・・・」

「身体的な特徴はどうだね」

「そ、そうだな。豊満な体つきで・・・」

「おお! び、美人だったか」

「え?」

「その人は、美人だったかと、聞いている!」

「う、うーん。そういうタイプじゃなかったような・・・。僕の三倍くらいは体重があるようだったし」

「・・・よし」

「今ので何かわかるのか!」

「いや。あいにくだが、忘れてくれ。俺の百科図鑑には、美女しか覚えていないんだ」

「レイル、こいつ殴っていいか」

「これ以上、話をややこしくしないでください・・・ジャヴさんも」


夜勤明けのせいか、集中力が切れてきたジャヴさんをなだめながら、僕は頭を回転させ続ける。


「しかし、笛を吹くわけにもいかんし、SSLの支部に連れていくか?」

「そ、それは困る。大事になってしまう。ウとサが起きる前に、宿に戻らなくてはならんのだ」

「宿を出てからどれくらい経ったんですか?」

「四半刻くらいか。匂いを頼りにパン屋までたどり着いたのだが・・・」

「そのパン屋の場所はわかりますか?」

「うむ・・・多分」

「まずは、そこまで戻ってみましょうか」

「すまぬ・・・よろしく頼む」


こうして、僕たち三人は志位さんが買い物をしたというパン屋まで歩くこととなった。眠そうなジャヴさんと、パンを食べながら歩く志位さんを率いて歩く。


「あ、ほら! 猫がいるよ! この辺りじゃないか?」


突然、志位さんが前にいる猫を指さす。


「宿にいた猫と同じ猫ですか?」

「・・・たぶん」

「つっても、猫に聞くわけにもいかないしな」

「同じ猫かわからない上に、移動している可能性があるから、目印にはなりませんね」

「うう・・・」

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