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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 東の剣士
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東の剣士 -3

「若、アホですか。異国の我々に、そんなことを言えるわけがないでしょう」


僕の思ったことがそのまま右側の人の口に出された。


「まさか、心を読んだ・・・!?」

「ん?」

「ん?」

「誰がアホだ! こら!」


思わず口走ってしまった戯言に両脇の男たちが反応する一方、真ん中の女性は怒られたことに憤慨していた。

右側の男性が、暴れる女性を担いで、細い道へ歩き出す。人込みを避けているのだろう。僕は、一応それについていく。


「冗談です。僕が思ったことが、そちらの人の口から出たので・・・」

「異国の人まで! 僕をアホと!」

「そうか・・・」

「まぁ、不自然ではないな」


うおおお! 降ろせ! と、獣のような抗議の声をあげる女性を降ろして、僕たち三人は意思の疎通を図る。彼女は、顔だちは幼さが残るが、実際のところは何歳なのだろうか。背が低く華奢な姿は、僕より年下にも見えるし、よくわからない。


「それでは、極力、もめ事のないようにしてくださいね」

「われわれもそれを望んでいる」

「あぁ、本当に望んでるんだぜ」


僕が改めて注意をすると、男性二人にしんみりとした空気が流れる。


「ええと・・・では、失礼しますね」

「うむ。騒がせてすまなかった」

「おい」

「む? ・・・あぁ。そうだな」


男性二人が、アイコンタクトをとってうなずく。先ほどから見ていたのだが、彼らは恐ろしいくらい意思の疎通がとれている。なにかのチームなのだろうか。


「尋ねるが、神殿の場所はわかるか」

「神殿・・・ですか?」

「ああ。剣の精がいるという神殿なのだが」

「剣精の神殿ですか!」


僕は三人をまじまじと見つめる。剣精のところへ用事があるということは、アーツ審査を受けるということだろうか。この中の誰か・・・いや、もしかすると全員かもしれない。


「その顔は、知っているようだな」

「はい。よければ、ご案内しますが」

「いや、それには及ばない。もう少し街を見ておきたいし」

「うちのに何か食わせないとならない」

「食べ物」

「そうですか、それでは・・・」


僕は、現在地から神殿までの道を説明する。


「ちなみに、剣精に会うにはどうしたらいいのだ? 試練を受けたいのだが」

「試練の受付ですか」


答えようとして、言葉に詰まる。よく考えたら、僕はカール少佐の命令でアーツ審査を受けただけで、正規の手順を踏んだわけではなかった。


「神殿の坂の前に、兵士がいますので、その人に聞けば多分わかると思いますが・・・」

「そうか。色々とありがとう」


長身の男は礼を言って、振り返り、立ち去るそぶりを見せた。

次に僕が見たのは、不可思議な動きだった。

まず、女性が先頭を歩き、僕から見て右側にいた男が左側後方につき、僕から見て左側にいた男が右側後方に位置して歩き出す。つまり、女性が進路を逆転させたと同時に、男性二人も位置をクロスさせていたのだ。

女性は、それに気づいているのかいないのか、かまわず先頭を進む。


(今のは・・・?)


僕の視線に気づいたのか、今は右側にいる色黒の男が振り返ってニヤリと笑う。


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