表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十二章 スパイ
119/200

東の剣士 -1

スパイ騒動の次の日、僕は休みをもらって一人で街を歩いていた。もともと休みをあまりとらない上に、知り合いを手にかけることになったということで、ララベルさんの判断で強制的にSSLに出勤しないことになった。

今まで休みをあまりとらなかったのは、ジュリアさんのようにまとめて取ろうと思っていたのだが、ずっと休まないで勤務を続けていると、かえって仕事の効率が落ちるというララベルさんの言葉に従って、素直に休みを取ることにした。家の手伝いをしていたときは、曜日で明確な休みはなかったので新鮮ではある。


「たまには、羽を伸ばしてね」


とは、ララベルさんの言葉だったが、夜勤で固定して勤務をしているので、その間の一日の休みでは、あまり大きなことはできない。どうせ暇な剣精のところに遊びに行こうとも思ったが、せっかくなので武器屋に行くことにした。こまめに手入れはしていたが、激戦のおかげで、僕のナイフは刃がところどころ欠けているのが、気になっていたのだ。

夜の間は本を読んで読み書きの練習をし、日の出とともに街へ出て、朝食(僕にとっては夕食だが)を済ませる。早朝にはまばらだった人混みが、少しずつにぎやかになっていく。街にも慣れてきて、住民の顔も少しずつだがわかるようになってきた。

勤務中の眠そうなSSLに声をかけたり、ちょっと狭い小道に入って道を確認したりして時間をつぶしながら、のんびりと歩く。寒い朝だったが、一歩一歩気が晴れていくのがわかる。自分でも気づかないうちに、心が摩耗していたのだろうか。

僕の足取りは、街の中心部へと向かう。


「この店、確かナイフがあったぜ」


と、ジャヴさんに教わった店は怪しい土産物屋だったので、入店せずに踵を返してララベルさんから教わった店に行ってみる。SSLの腕章があれば、割引で買えるという。

武器屋は、大通りの目立つところにある。装飾やコレクションではなく、実用的な家庭の刃物から大工道具、武器防具までそろえている店らしい。一人で知らない店に入るのは、まだ緊張する。

角を曲がると、店が見えてきた。朝の武器屋などは、人がいないものだと思っていたのだが、店の看板の下には何故か人だかりができていた。


「何故だ! 品ぞろえを見たいというだけだ!」

「勘弁してくださいよ・・・」


女性の大きな声と、店員のが聞こえてくる。非番とはいえ、目の前にトラブルがあれば対応しなくてはならないだろう。

僕は声の方へと駆け出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ