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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十二章 スパイ
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スパイ -9

ララベルさんは、ラストとは業務連絡以外ではまともに会話をしたことがなく、ほとんど初対面だった。王宮で張り込みをして、ラストが出てきたときは、知り合いではなくてほっとしたという。


「ラスト・・・おとなしく、投降しなさい」

「投降? スパイなんて、どうせ任務に失敗したら国から見放されて終わるんだ。投降するメリットなんて何もない」

「少なくとも、私に殺される可能性はなくなるわ」

「お前に? 俺が?」

「あなたが、コボル隊を相手にできるの?」

「確かに、コボル隊は曲者ぞろいだ。・・・だが、俺が怖かったのは、ロートルのコボルではなく、天賦の才と言われたジュリアだ。死にたくなかったら、引っ込んでいろ」

「そう。・・・ディランならともかく、私もあなたなら怖くないから、勇気が出たらかかってきていいよ」


チッと舌打ちをして、ラストのサーベルが音もなく振り下ろされる。明確な殺意が込められた一撃だった。

ララベルさんは、ステップで動線をよけつつ、槍を回転させて利き腕を叩き落とそうとするが、ラストの腕の引きに間に合わない。普段なら届いているはずの攻撃が、わき腹の怪我のせいで鈍くなっている。

自分の状態を再確認したララベルさんは、深追いをせずに間合いを稼ぐ。


(あの時、レイル君が声をかけてくれなかったら・・・)


背後から無言で切り付けてきたディランの姿を思い出し、身震いする。気が付けば一緒に走ってきたはずのジャヴさんがいなくなり、自分もやられるところだった。


(今の私にできるのは、レイル君が二対一になるという状況を避けること・・・。一度レイル君に助けられたのだから、彼の足を引っ張らないようにしないと・・・)


ララベルさんは、僕がララベルさんたちから距離をとったのを確認して、槍を引く。


「防戦か? あんな小僧に任せるとは・・・ディランもなめられてるようだな」


ラストは、驚いたように言う。状況から考えると、この場にいる四人は一刻も早く自分の相手を倒し、残った相手を二対一で叩くのが、セオリーだ。守りに入ったということは、僕の戦闘の結果を信じるということに他ならない。


「・・・レイル君は、今までいくつもの困難を乗り越えてきた。これくらいどうってことない・・・」


そう言って、ララベルさんはわき腹の苦痛をマナで緩和する。

ラストは、その隙を逃さずにサーベルによる猛攻をかける。

面突き、鎖骨斬り、大腿斬り、腹部への突き。かわしたはず、防いだはずの攻撃が、わずかに届いて肌を細かく刻んでいく。


(おかしい・・・怪我をしていても、ここまでくらうほどの攻撃ではないはず・・・)


ラストは、ララベルさんの血の粒が肌からこぼれるたびに、くっくっくと笑いをこぼす。


「何か、トリックがありそうね・・・」

「凡人はわからないまま、死んでいくといい」

「・・・とはいっても、アーツじゃなさそうね。手負いの人間一人倒せないようじゃ、アーツ審査に受かるわけないもの」

「なんだと・・・」


途端に、ラストは気色ばむ。


「レイル君が将来有望だから、ラストも比較されて可哀そうだとは、思うよ」

「貴様・・・!」

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