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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十二章 スパイ
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スパイ -7

同じ二対二とはいえ、こちらにダメージが大きい。ジャヴさんも、ここに来るまでにやられた可能性が高い。

僕とララベルさんは、背中を合わせる。


「ジュリアさんは・・・」

「私と交代で、今は王宮から離れたところにいる・・・ジャヴがやられたなら、私たち二人だけね」

「・・・」


状況が好転する材料は、少ない。ララベルさんの呼吸は、さほど乱れていない。まだギリギリ戦えるか。


「ディラン! どうしてなの! 家族のために・・・お金を稼ぐんじゃないの」

「家族か・・・俺の本当の家族は、本国にいるよ。・・・それも、数年前までの話だがな」

「そんな・・・奥さんとは、あんなに仲が良かったのに」

「あれは、縁もゆかりもない、国からあてがわれた女だ。十年以上一緒に住めば、少しくらい情が沸くかと思ったが・・・お互い、無駄な時間だったよ」

「ディラン・・・」


ララベルさんは、信じられないという声をだす。背中越しに、悲愴な表情が伝わるようだ。


「なんにせよ、そろそろこっちでの活動期間が長くなりすぎた。・・・もう、疲れたよ。レイルを連れて帰るか、殺すかして、故郷へ帰らさせてもらう。後は、そこの若造が上手くやるだろう」

「・・・一つ、いいですか」


僕は、ラストから切っ先をはずさずに、ララベルさんの背中ごしに話しかけた。


「・・・手短にしろ。答える気になったら、答えてやる」

「コボル警備長を襲ったのは、あなたの手配ですか」

「・・・そうだ。王宮に呼ばれる時には、必ず武器を持たずに歩くからな。お前と、コボル・・・どちらかを消す千載一遇のチャンスだった」


クックックという笑い声が聞こえてくる。


「・・・あなたは、コボル警備長とは長年の付き合いなんじゃ、なかったんですか」

「長い付き合いさ。なにせ、精霊格を継ぐといわれたほどの男だ。軍部にいるときから、ずっとマークをさせられていたからな」

「精霊格・・・?」

「おっと・・・まだ知らされて。まぁ、いい」


ララベルさんの気配に緊張がまじる。ディランが、ナイフを構えたのだろう。


「さて、これ以上怪我をさせないうちに聞いておくが・・・レイル、我々の国にこい」

「断ります」


僕は、即答する。


「・・・俺の命令は、お前の首から上だ。手足と体の有無は問われていない。お前も、せっかくアーツ・ホルダーになれそうなんだ。まだまだ技の研究をしたいだろう」


甘言を放つディランを、僕は突き放す。


「僕は家族を失ってここにいます。それがあなたと同じ境遇と言えるか・・・わかりませんが、このSSLのコボル隊の皆を家族同様だと思っています。あなたと違うのは、僕は家族を置いていかないということです」

「知ったような・・・口を・・・」


ディランの声に怒気が混じる。僕と同じように、ディランさんも家族のことが逆鱗となっているようだ。


「そして、その家族と思っている・・・ジャヴさん、ララベルさん、コボル警備長を傷つけたのは、許さない! お前だけが、怒っていると思うな!」

「レイル君・・・代わるわ」


僕の気勢を受けて、ララベルさんが回転して僕とポジションを交代する。

僕と、ディラン。ララベルさんと、ラストが対峙する状況になった。

僕も怒りをまとっているが、ディランの表情も赤くなって、燃えるようだった。

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