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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十二章 スパイ
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スパイ -5

冷たい空気の中で、星が輝きを競い合っている。寒くて眠い夜勤に楽しみがあるとすれば、この星空だ。家族のことを思い出して涙を流した日も、剣精に手も足も出ずにひっくり返された日も、星は無償で輝き続けていた。

吐く息は白く凍り付く。山の中で見た流星のことを思い出しながら、僕はラストさんにナイフを突きつけていた。


「お前・・・くそ・・・どうして・・・」


僕は無言で首を振ると、ナイフを数センチ近づける。僕の背後から、ララベルさんが応援に駆けつけてくる。


「傷つけたくありません。抵抗しないでださい」

「俺が怪しいと思ったのか?」

「ラストさんが怪しいなんて、思っていませんでした。宮殿の中で僕に近づくものを捕獲するようにと言われただけです」


隊長会議の後に行われたララベルさんの説明では、スパイはアーツ・ホルダーに接近しつつあるという情報がSSLに入ったという。そこで、コボル隊、アッシュ隊は、それぞれアーツ・ホルダーのアッシュ警備長と、候補の僕を単独行動させて、周囲を警戒させていた。

その2日後、物陰に潜んだラストさんを、こうしてコボル隊が取り囲んでいる。ラストさんがスパイかどうかはまだわからないが、王宮に許可なく忍び込んだ(または、用件が終わっても出なかった)だけで、罪に問われる。ラストさんを逮捕する正当性に迷いはなかった。

特訓中に物陰に潜んでいたラストさんを発見したのは剣精だったが、これ以上手出しをするつもりはないようで、離れたところからこちらを見ている。


「おとなしくつかまるとは、思うなよ」


へっへっへと笑った後、ラストさんはサーベルを抜く。王宮への武器の持ち込み、抜刀。ラストさんの罪状が、重なっていく。


「やめてください。囲まれているんです・・・。抵抗したところで、もう逃げられませんよ」

「どうかな。この状況では、君もアーツを使えないだろう? それとも、木剣で僕の相手をしようというのか」

「・・・」


突如として繰り出された電光一閃の払いを、かろうじてかわす。細身のしなる剣が、宮殿のかがり火を受けて赤く光る。僕は、ラストさんの胴に蹴りを入れる。距離をとるための蹴りで、ダメージを狙ったものではない。

ラストさんの剣は、僕の手首を狙っていた。切り落とす軌跡ではなかったが、受ければ行動不能になるのは間違いない。続けて、面打ちが繰り出される。横にかわしたところを、残った軸足狙いに軌道が変わる。僕は、足のマナで筋肉を緊急発動させ、それをしのぐ。ラストさんのサーベルは、自在の軌道を見せていた。

ララベルさんと挟撃にできる状況で、無理に攻める必要は感じていなかった。剣精は人間に手出しできないので離れていたが、このままララベルさんと僕で多対一に持ち込めばいい。


「レイル!」


ララベルさんの後ろからディランさんも駆けつけてくる。手に汗が出てきて、鼻の奥にアドレナリンの匂いがする。


「ララベルさん! 気を付けてください!」

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