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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十一章 忘却の中の戦い
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スパイ -1

アッシュ警備長に稽古をつけてもらった数日後。その日の夜勤の連絡事項には、「伝達事項があるので、直帰せずに必ず本部で待機すること」と書いてあった。

僕は、同じ班のジャヴさんと顔を見合わせた。


「ジャヴさん、これは・・・?」

「わからん。だが、きっといい知らせじゃないな。今日の日勤も早出をしたようだし・・・」

「そうだったんですか」

「あぁ・・・」

「では、剣精には稽古が長くなりすぎないように言っておきます」

「おう。怪我すんなよ」


首をかしげながら、連絡を読むジャヴさんと別れ、僕は剣精のところへ向かう。


「ふむ。では、今日の修行は軽めにしておこう」


そういったのは剣精だったが、最初につばぜり合いまでいったところで、スイッチが入ったようになり、内容は結局いつもと大して変わらなかった。息を荒くする僕を、剣精は余裕の体で見送る。


「・・・ありがとうございました」

「うむ。また明日な」


特訓をしている間は誰の笛も鳴らず、夜勤からしてみれば平和だったといえる。

涼しい顔の剣精に別れを告げて、階段のところにいた眠そうなジャヴさんと共に本部へと戻る。SSLの会議室は、夜勤と思われるSSLの隊員でごった返していた。

ジャヴさんと僕は、同じ夜勤のディランさんを見つけ、近くに座る。


「よう、ディランのおっさん、何か聞いてるか?」


そう言って、ジャヴさんは前の方に準備されている壇を指さす。


「いや、さっぱりだな。俺の区域も平和そのものだったし・・・それより、レイル、剣精の稽古はどうだ?」

「防御の基礎ばかりやっています」

「そうか。だが、基礎は大事らしいからな。しっかりやるんだ。給料が出て、稽古をつけてもらうなんて、なかなかないことだからな」

「・・・はい」


ドアが開き、壇上に、アッシュ警備長が登る。


「あ、アッシュ警備長だ」

「チッ、あいつか。コボル警備長のおこぼれをとりやがって」

「ジャヴさんは、アッシュ警備長を隙じゃないんですか」

「俺のモヒカンが、爽やかな男を本能的に拒絶するんだ。油断すると、彼女か娘をとられるぞ・・・ってな」

「どっちもいないじゃないですか・・・」

「できたときに、この勘が鈍っているといけないからな。研ぎ澄ませておくのよ」

「・・・」


東と北のSSL兼任だけでも大変そうなのに、部下の理解が得られなくて気の毒に思う。

ジャヴさん以外にも、同じ思い抱えている人はいるのだろうか。コボル警備長の存在が大きかっただけに、アッシュ警備長も大変だ。


「えーと、皆さん、ご静粛に願います」


広間の前で二度手を叩くと、場はしんと静まり返った。


「夜勤で疲れているなか、お集まりいただきありがとうございます。手短に話しますので、ご清聴をお願いします」

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