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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十一章 忘却の中の戦い
103/200

11-5☆

剣精の掛け声に合わせて、僕たちは再び対峙する。僕は、アッシュ警備長のアーツを警戒しつつ、自分のアーツを繰り出すタイミングを計算していた。じりじりと、距離を詰めようとしたが、


「うん、わかった」


アッシュ警備長は、急に構えを解いた。


「君のアーツは、無条件に発動するものではないんだね。何か、タイミング的やチャンスが必要なタイプなのかな」


苦も無く見抜かれてしまった。腹のうちを探り合うには、まだまだキャリアが足りないということだろうか。にこりと笑うと、アッシュ警備長は体にマナを寄せ始めた。


「時間もないし、硬直状態になってもしょうがないから・・・僕が先にいくよ」


そういって、アッシュ警備長は振り返ると、僕に背を見せた。戦闘中に相手から目を離すなどと、常識的に考えればありえないのだが、相手がアーツ・ホルダーだとわかっているがゆえに、僕はアッシュ警備長の背中に向けて手を出すことができなかった。

構えて警戒を続ける僕に対して、アッシュ警備長はまたも驚きの行動を見せた。

アッシュ警備長は、背をのけぞらせて、ブリッジのような体勢をとったのだ。ブリッジのようなと表現をしたが、正確には、手も頭も地面についていない。背筋から太ももにマナを集中して、全身を支えているのだろう。


僕より背の高いアッシュ警備長を、見下ろす形になる。しかも、アッシュ警備長の頭が、僕の足元の方を向いている。体験したことも、想像したこともない、実に奇妙な構え? だった。


「こ、これは・・・」


隙だらけのような気もするが、ではどうやって攻めるかと言われると、言葉にできない。


「ほら、実戦じゃ動きを止めちゃ、ダメだよ」


アッシュ警備長は、その姿勢からは予想もつかないスピードで距離を詰めてきた。冗談やその場の思い付きではない。これは、確実に訓練をした動きだ。

僕は、ナイフを出そうとして、重要なことに気が付いた。単純だが、地を這ってくる相手には、ナイフが届かないのだ。


「それっ」


アッシュ警備長の長剣が、僕の足を刈ろうとする。慌てて距離をとるが、僕が避けてまわるよりも、アッシュ警備長の追ってくるような移動の方が早い。

時に地面を這うように剣を繰り出すアッシュ警備長の剣の軌道は、上体ではなく、足を狙って攻撃してくる。僕からの攻撃は届かないが、アッシュ警備長の剣は常に僕の足を狙える位置にある。距離をとることもできず、足への攻撃はかわすことさえままならない。


奇天烈な構えの効果は、想像以上のものだった。強靭な体幹と、マナのサポート、そして、常識にとらわれない発想がなければ、こんな構えは生み出せないだろう。

死角をとろうと周りこもうとしても、アッシュ警備長が回転するほうが速い。


「それならっ」


僕は意を決して、アッシュ警備長の上を飛び越える。


「うーん」


剣精が、不満げに唸る。


「そうきたら・・・こうだね」


アッシュ警備長は、足の力だけで体を起こすと、通常通りの体勢になり、飛び越えて着地する僕を木剣で制した。次の一手が、思い浮かばない。


「まいりました・・・」


顔の前に木剣を突き付けられて、僕は白旗を挙げる。終わってみれば、終始、アッシュ警備長の手の内という感覚だった。

【名称】ローラ、僕の愛を君に捧ぐ 

【発案者】アッシュ

【分類】構え

【マナ使用部位】足、背中

【難易度】易しい

【使用条件】特になし

【解説】地面を背にして、脚と背筋で上体を支え、地面ギリギリに移動・攻撃を行う構え。相手の腕からは遠くなり、自分の腕は相手の足を狙える。奇妙な構えだが、剣技同士で対戦する時には効果が高い。鍛え上げれば、相当なスピードで動くことができる。マナが尽きると、姿勢を維持することが困難なのが、欠点。

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