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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十一章 忘却の中の戦い
101/200

11-3

「ええと、言いたいことが二つある」


剣精は言葉を選んで口に出そうとし、思いとどまって頭を振った。


「いや、やっぱり一つでいいや。一つ! 君たちは拒否権を持つほど強くない。以上だ」


僕たちの人権が、剣精の宣言であっさり握りつぶされてしまった。

とはいえ、やりたくないことは、やりたくない。いざというときは、アッシュ警備長と僕の二人がかりなら・・・と考えたところで、剣精と目が合った。


「やめておけ。アッシュが三人くらいなら、面白くなるだろうが」

「う・・・」


自分の実力不足が、悲しい。とはいえ、僕がアッシュ警備長並みに強くなっても、まだ二人がかりでは倒せないということらしいが。


「それで、具体的には何をすればいいんでしょうか」


アッシュ警備長は、挙手をして質問をする。アッシュ警備長は覚悟を決めたのだろうか。


「まず、諸君にはこの薬を飲んでもらう」

「ええ・・・薬、ですか」


ますます話が怪しくなってくる。下唇を出して、怪訝な表情をする僕を見ずに、剣精は懐から紙に包まれた薬を二つ取り出した。


「私が調合したものだ。もともとは別の目的のために開発された薬なんだが、こいつには副作用で、前後30分の記憶が飛ぶという、面白い特性がある」

「おお・・・」

「と、いうことは・・・」


僕とアッシュ警備長が、同時に感嘆の声を上げる。アーツ・ホルダーだからこそ、理解が早かった。


「そうだ。二人とも、お互いに漏洩のリスクなしにアーツを使える。私は審査員だから、もう見ているので問題はないだろう」


アーツを、他の人に使える。これは、ちょっとすごいことだ。登録したアーツは、漏洩した時点で価値が大きく下がる。

最悪のケースでは、情報の秘匿のために相手を殺さないといけないという縛りから、抜け出せるのだ。

せっかく身に着けても、練習も実戦もしづらいというアーツのありようが、変わるかもしれない。そう思った。


「レイルは、字を書けたな」

「はい」

「よし。アッシュは大丈夫だろう」

「ええ」


剣精は、僕とアッシュ警備長にペンと紙を渡した。


「これは・・・?」

「終わったら、相手のアーツの感想を書くといい。ただし、当たり前のことだが、アーツの内容は書いてはいかんぞ」

「どうして、こんなことを・・・?」

「目が覚めたら、お前たちは、自分は本当に記憶を失っていたのかと聞くからだ。終わってしまえば、一瞬気を失っていただけに感じるからな」

「ふむ・・・剣精は、どうやってこの薬を手に入れたんですか?」

「私は、人間だったころは、医者だ。薬の調合の研究もしていた」

「へぇ・・・」


アッシュ警備長も初耳だったのか、興味深そうにうなずく。


「メモは、一応私が目を通してから返却するから、安心しろ。・・・ほかに、質問はあるか」

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