8.ウ=ス異本
他には……何かないかな……
ん?宝箱の底を、ずらせる?……あ、外れた。二重底ってやつ?冒険家の本で読んだ。
すごい、まるで本の冒険譚みたい!中には……なんか薄い本がある。
ん、あんまり風化が進んでないね。これなら読めそう。
「どれどれ……?エーロ=ドゥージーン?描いた人の名前かな?」
表紙はやたら目の大きいデフォルメされた女の子が描かれてる。絵、上手いなぁ。
中を開いてみると……私は興味本位で開いてしまったことを後悔した。
私はばたんと本を閉じて元の場所にバンと戻した。
「はわわわ……あぁぅうぅ……」
な、何、あれは……あんまりの内容に、顔が熱くなって、心臓がどきどきしてる。深呼吸、深呼吸……
なんなのよ、あれ……人間の男の人って、あんなに乱暴なの?
し、しかも、あの触手を持ったおぞましい生物が、地上には居るというの?
こ、怖い、地上怖い。いつか地上に行ってみたい、って思ってたけど、考えを改めなきゃダメかしら……
ま、まあ、それはそれとして、他にも絵画とかあったけど、風化しててもう価値はなさそうね。
他にももう一つ部屋はあったけど。ここと同じような感じ。
持って帰れそうなのは宝石をいくつかかな。他のものはちょっと、持って泳ぐにはダメそうだし。
さて、成果もあったことだしそろそろ帰ろうかな、もうそろそろ一週間たっちゃうし。
そうして、船を出たところで、くぅ、とお腹が鳴った。
「あぅぅ、お腹すいた……」
そういえば、無理に陸上で動いたもんなぁ。イクラも全部食べちゃったし……
「……ん?なんかいい匂いが……」
ふと見上げると、目の前に美味しそうなエビが漂っていた。
「わーい、ラッキー。」
パクッと口の中に入れて噛むと、口いっぱいに広がるプリッとした甘みと、奥歯にガッキリ引っかかる異物感が……え?
良い子のみんなは、目の前で漂っている食べ物なぞ食べないように。