7.宝物庫
「えい。」
ガチャリと扉が開いた。
考えてみれば、簡単な話だった。銛でノブを回せばいいんだ。
ギィィと音を立てて扉が開いていく。
そして、私はドアと天井の間のアレを乗り越えて……
「むぎゃっ!?」
そして、無様に顔から落ちた。
「あいたたた……」
うう、ひどい目に遭ったわ……
顔を押さえながら起き上がって、辺りを見回す。
「ん……?わぁ~~~!」
そこにあったのは、金銀財宝や宝石。たぶん元々その辺に転がってる箱の中に入ってたんだろうけど。逆さまになって、辺りに散乱している。
「すごーい……いったっ!?」
近づこうと床に手をついたら、手に鋭い痛みが走った。みると、床には光る欠片がバラバラと落ちている。
気が付くと、手からはダラダラ血が流れ出ている。これで手を切っちゃったみたいね。
「……キュアー。」
呪文を唱えると、傷口がみるみる塞がっていって、血が止まった。
その欠片を覗き込むと…
「わっ!?」
欠片の中から、何かが見つめ返してきた…!?
「な、何!?中に誰かいるの!?」
私が驚くと、そこにいる相手も驚いて、飛び退いて視界から消えた。
「……ん~~?」
思わず飛び退いて壁際まで逃げてしまったけれども、何も起こらない。
もう一度、そーっと覗いてみると、やはり向こうからピンクの瞳が見つめ返してきていた。
私が目を細めると、向こうも同じように……
「……あっ。もしかして……」
破片の中心には、持ち手のついた丸い板。板の中には破片の大元の光る板がはまってる。多分、元々は綺麗な装飾がついてたんだろうけど、もうすっかり錆びちゃって見る影もないね。
手を切らないように気を付けて拾って覗き込むと、やっぱり桜貝のような目に金髪の少女の姿。私が手を上げると、少女も手を上げる。
これって、あれよね。鏡。人間が自分の姿を映して身だしなみを整える道具。
自分の姿なんて初めて見たわ。え、海に映したりして見たことないのかって?そりゃあ、海に物が映ることはあるけど、自分の姿をはっきりくっきり映せるほど凪ぐことなんてほとんどないわ。
「こうしてみると、我ながら結構美人ね、お母さんそっくり。」
さてと、宝石とかはいま全部は無理だけど、ちょっと持って帰っておこう。