6.上陸
休憩も終わって、惰性で探索を続けていると、様子が変わってきた。
階段に差し掛かったところで、水面が見えた。
「……!もしかして、空気があるの?」
波打っていて、上の様子は見えないけど、外から見た大きさから言ってまだ上にも部屋があるはず。無事なものが何かあるかも。
「……」
私はそーっと、水面から顔を出した。
すーはー、すーはー……うん、息はできる。問題なし。
軽く見まわしてみたけど、湿気てはいるけど浸水はしていないみたい。
ついでに、この次の階段はない。つまり、ここが最上階、いや、最下層。
「よっこらしょっと……。」
階段に手をついて、下半身を引き上げる。ううっ、体が重い……とりあえず、階段に腰かけよう。
何しろ、陸上だと水の浮力がないし、しかも私はとーぜん全身ずぶぬれなわけだから、主に髪の毛がすごく重い。ちょっと絞っておこう。
しかも、この船、逆さまだからこれは階段の裏なわけで…しかも古いもんだからささくれたりしててちょっと手が痛い。
とりあえず、我慢して腰かけた姿勢のまま後ろ向きに階段を上って行って上の廊下に出る。
「うん……とこ……しょ……どっこい……しょ……」
上まで行ったら、腕と下半身で這いずるようにして廊下(の天井)を進んでいく。
ううっ、鱗に傷が残っちゃうなぁ……この桃色の鱗、集落でも評判の自慢の鱗なんだけどなぁ。
「いっ!あっ……」
今度はささくれに引っかかって、鰭が切れちゃったぁ……。ひらひらしてて綺麗なんだけど、裂けてビラビラになっちゃったよぉ、うう……
まぁ、鱗はどうせ生え変わるし、鰭は再生するし、爪を傷つけるようなもんでそんな痛くないし、別にいいんだけど。でもちょっとへこむなぁ。
せめて髪の毛は引っ掛けないように上で結わえておこう。
「ふぅ、やっとこさ部屋に着いたよ……さて、入ってみよ……」
そういって、ドアノブに手を…手を…
「う……うああああああああっ!?届かないーっ!」
重ね重ねいうけど、今この船は上下逆さま。本来はドアの高さよりちょっと上に天井があって、人間にとって過ごしやすいんだろうけど、逆さまのいまは床より少し上にドアがある。
「う゛~~~~~ん……だめだぁ、届かない……」
背の高い人間なら、ここからでも届くかもしれないけれど、私はそもそも背が高くない上に、人魚だ。陸上では立ち上がることもできない。
さっきまでは普通に泳いでいけばどうにでもなったんだけど……ここには水はない。
「ど、どうすれば……」
考えて!考えるのよ、ラミィ!この危機を乗りこえるのよ!