表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の丘の人魚姫  作者: はちがね
第1章 ラミィ、さらわれる
3/48

3.魔物

 少し進むと、魚だけでなく、小型の魔物もいくらか見えるようになってきた。

 魔物とは、魔力による変異で生また、普通の生物よりも強靭な生物たち。

 こういう魔物は、魔力がたまった場所や不浄な場所に繁殖しやすいって聞いた。船の中は流れがよどんでいるし、きっとそのせいだ。

 体内から光を放つヒカリクラゲが繁殖してて、窓がなくても明るいのはありがたいんだけど。毒毒しい色をした、猛毒のドクドクウミウシまで居るのは危なっかしくてやだな。

「……やだなぁ、触るだけでもかぶれるし、うっかり潰した日には大惨事だもの。生きた心地がしないわよ、まったく。」

 そんなことを言っていると、船の廊下の向こうから、何かの気配を感じた。

 小さな生き物とは違い、水を押しのけて進んでくる気配。

 廊下の角から小魚たちが私の脇をすり抜けて逃げていく。

「な、何!?」

 それらを追って、薄暗い廊下の向こうからぬぅっと現れたのは、血塗られたギラギラと鋭い牙に、血走った眼玉、次いで甲殻のように固く、テラテラと光沢のある赤黒い鱗に覆われた胴体が現れる。

「で、でたぁ!」

 こいつはブラッドシャーク。他の生き物に襲い掛かり、食らいつくす、狂暴な大型の魔物の一種。

 ブラッドシャークがこっちに気付いた。私は銛を構える。

 ブラッドシャークが大きく口を開けて突進してくる。

「ぐぅっ!」

 銛を使って突進をいなす。すれ違いざま刺突を繰り出すけれど、鱗が固すぎて通らない。

 むしろ銛のほうが削られそうな勢いに、水を蹴って一旦距離を取る。

 この銛も、元々は何処かから流れ着いた古い人間の持ち物を、騙し騙し使ってきただけだからなぁ。ちょっと錆びてるし。

 今まで何回か魔物とやりあったことはあるけれど、鱗の硬くない魚や、鱗の無い軟体動物ばっかりだった。

 だから、銛が古くてもあんまり問題にならなかったけど、いい加減どうにかしたほうがいいかな。

 私は壁に銛を突き立ててブレーキを掛けながら、サメを挑発する。

「ほらほら!かかってきなさいよ!」

 挑発するまでもなく、血鮫はUターンして再び突進をかけてきていた。

 鋭い牙がずらりと並ぶ顎で噛み裂かれれば、私なんてあっという間に死んでしまうだろう。それでなくても、あの体を覆う鱗に触れるだけで、皮膚が裂かれてしまうことは間違いない。

 でも、私はあえて正面から向かっていった。

 鋭い牙が眼前に迫る。あと少しで…今だ!

「そぅれっ!召し上がれ!」

 私は銛を投げて血鮫の口の中に放り込んだ。同時に素早く身をかわしてすれ違う。

 目の前にいた私を噛み殺そうとしていた血鮫は、勢いよく口を閉じて銛を飲み込んだ。

 嚙み千切られた金髪が数本、ふわりと水中に舞う。

「どう?これで…」

 だが、血鮫はすぐに銛を吐き戻して、また私を追いかける体勢に入った。

「うぅ、効いていないの?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ