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旅人は神に出会った

 その少し前のこと、リースはというとーー。


 実は教会へ行けという爺さんの指示など無視して、狩りを楽しんでいた。


 生き物狩りなど、過去の日本では堪能できないことだった。


 そんなことをしたら、愛護法で豚箱行きだ。


 傍から見たら狂気の笑みで、美少女がモンスター狩りを楽しんでいるのだから、周りの人たちはモンスター狩りに出る勇敢さなど通り越して恐怖していた。


 レベルは5になっていた。


「うーん。村長には教会に行けって言われていたし、そろそろ行こうかな。レベルも少し上がったし」


 村の端を流れる川には橋がかかっていた。


 橋の先には、教会の上半分が見える。


 下半分は木々に隠れて見えないが、歴史を感じさせる(つまりボロい)。


 橋を渡り、教会に向かっていると、


「きゃあああ」

 

 と林の奥から悲鳴が響いた。


「な、なんだ!?」


 悲鳴がした方に目をやると、女の子が5人組の男たちに襲われている。


「お、おい! 何しているんだ!」


 6人がこっちに目を向ける。


 ちょっと待てよ、とっさに動いてしまったが、途端に冷静になる。


 自分のレベルであの5人を相手にできるのか?


 この世界では相手のレベルがわかったりはしないようだ。


 そういう魔法とか覚えたらできるのかもしれないが。


 今まで弱いモンスターばかり相手にしていたから考えなかったが、負けたらどうなるんだろう。


 所持金、半減とか?


 ありえない! 何億円失うんだ!


 半額だったら、だいたい350,000,000イェン! 


 5人組の一人が、


「へへへ、あれもやっちまおうぜ」


「なんだ、女一人か。いいぜ、やっちまうか」


 は、女って自分のことか。


 5人組のうち一人がこちらに向かってくる。


 汚らしい奴で、その出で立ちがなんだか怖い。


 男がナタを振り上げる。


「ひ」


 とっさにこの間買った鋼鉄の剣を背中の柄に手をかけ、一本背負いの要領で振り下ろす。


 鋼鉄の剣は2,3キロの重量で、長さが2メートルにもなる両手剣だ。


 この世界での身長が155センチ程度の自分には長過ぎる剣である。


 ま、現実世界の方での身長でも長いけど。


 振り下ろした剣が男のナタを吹き飛ばす。


「うわあああ」


「まだやる?」


 男が腰砕けてリースを見上げる。


 人間相手は初めてで勝手がつかめず、息が乱れた。


 とりあえず、こいつはもういいな。


 女の子に襲いかかっていた男たちがこちらに目を奪われている隙に、その女の子が逃げ出した。


「あ、待てー!」


 4人が女の子を追う。


「あ、あいつら」


 このままにしておけないし、仕方ない。追いかけよう。


 リースも女の子を追いかける4人の男を追いかけた。


 女の子と4人の男たちが教会の中へ入っていった。


 ぶっちゃけ、鉄の鎧と鋼鉄の剣を身に着けて走るのはしんどく、距離が離れてしまった。


 突然、教会の窓ガラスから強くまばゆい光も発せられた。


「へ?」


 光とともに、4人の男たちが扉から吹き飛んできた。


「へ??」


 光が収まったかと思うと、また光った。


「へ???」


 リースはその光に引き寄せられるように、教会の扉を開けた。

 

 教会の中には、ひれ伏す女の子と古代ローマ人にように布を巻きつけた長身で細身の男がいた。


「君は?」


 神が教会に入ってきた少女に問う。


「へ、あ、いえ、村長に言われて教会を訪れたのですが」


 少女が背負う剣に気づく。


 神は思った。


 4011年にもなったのに、剣? コスプレ?


 さっきの野盗だし、王という存在も……どうやら2000年経た現代を理解するには時間がかかりそうだ。


「あ、名前はリースです。旅人やってます」


 リースはウィンドウに出てくる職業を口にする。


「あとテンセイシャってのも」


 ついでに村長らしき身なりのよい爺さんが言っていたことも伝えてみた。


「テンセイシャ?」


「テンセイシャ様なのですか?」と神の足元にいた女の子が顔を上げる。


「テンセイシャとういのは?」


 神が女の子に聞くと女の子は意気揚々と答え始めた。


「この世界では、生まれたときから、役割をもっています。

 ご存知のように、それが職業です。

 通常、商人の子は商人、宿屋の子は宿屋が職業になります。

 農家と商人を両親にもつと子はそのどちらかになります。

 その職業を辞めてしまうと、人間は旅人か野盗になるんです」


 女の子は続ける。


「でもその中で旅人は、テンセイシャと呼ばれる職業になることがあります。

 それはとても稀なことなんです。

 テンセイシャの方は、その後、あらゆる職業を選ぶことができる……

 そう聞いたことがあります」


 え、そうなんだ。

 じゃあ、ドラゴンスレイヤーとかの英雄になれるの? とリースは浮足立つ。 


 ふむ……。

 利用価値がありそうだ。 と神は眼を光らせた。


 神が一歩、リースの前に出る。


「そうか。私は今、元々私の所有物であった秘宝を探している。

 それは現王が奪い去ったのだ。

 テンセイシャの君に頼みがあるのだが、秘宝を取り返す役を担ってはくれないか?」


 イベント発生! とリースはもちろん首を縦に振って頷いた。

 


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