調理2
次に私が気になったのは、ローストビーフなる食べ物の近くに置かれている魚の切り身だ。
ただの魚の切り身ならそこまで気にもならなかっただろうが、この切り身は何かの細工がありそうなのだ。
何故かというと、この切り身が何か赤いものを挟んでいるからだ。少々分かりにくい表現だが、簡単に言うとハンバーガーのように二つの薄切りにされた魚の切り身で何かを挟んでいるような感じだ。
これは見た感じ何かするというより、そのまま食べて良いのだろう。
ソースのような物もかかっているようだし、男もただニコリと頷いた。
私はこの食べ物をまたしても、一口で口に押し込むことにした。
奴隷時代に身に付いた食べ方でやはりこの方が何かを食べているという気持ちになれるのだ。
この食べ物を口に入れた瞬間に分かった事として、これはまず薄切りにした白身魚を軽く湯がき、魚の肝を使ったソースで味付けしたものだ。
少々薄い味付けのような気がしたが、そうなっている意図にもすぐに気付いた。
それは噛んだときに中に挟まれたある食べ物のことだ。
噛んだ瞬間にプチっと潰れ中から飛び出してくるほんのり塩味の聞いたこの味は、そう[いくら]だ。
このいくらの塩味が口の中に広がり白身魚、ソースと交わったとき、初めてこの料理は完成したと言って良いだろう。
先ほどとはうって変わって、魚介の風味が口のなか一杯に広がるとても上品な味だ。
その他にも、大きな貝が入ったドリアや海老とほうれん草のサラダなど、不思議な味の料理がたくさんあった。
全てを食べ終わり呆然としていると、ここで久しぶりに主人が口を広げた。
「いやーまさか全部たべれるとは思っていなかったよ。どうだい?これが僕の料理だよ。」
私は思ったままの感想を口にした。
「ほ、本当に美味かったです。今まで食べたどんな料理よりも本当に!」
つい、最後の方は感情をいれて、大きな声を出してしまった。
だか、なんとなくもう分かっていた。
この人はこんなことでは怒る人ではないと。決して油断をしてはいけないが。
主人はやはりまたニコリと笑って優しい口調で口を開いた。
「そうかい、それは良かった。ではお腹も膨れたことだし色々聞きたいこともあるだろう。少し長くなるが、僕の話を聞いてくれるかな?」
と言ってきた。
私も今の現状を知れると知って、はっきりと返事をした。
「うん、じゃあ話をしよう。君が何故ここにいるのか僕は誰なのかそして、これからのことを。 デザートでも食べながらね」