お通し2
意気込んで作っていこうとしたものの、少なからず問題もあった。
それは調理器具でベストなものがないということだ。
食材に関しては、特に問題もないのだが、ここは一工夫が必要だな。
私はとりあえず一度、試作品を作ってみることにした。
「お、調理にとりかかったようだね。どう?イメージは固まった?」
「はい、といってもただ単に私が好きな食べ物を作るだけなんですけどね」
「それで、良いんだよ。出来上がったら一度試食させてもらってもいいかな?」
「はい!お客さまに出すものなので私もお願いしようと思っていました。」
ディーンさんに食べてもらうなら失敗は出来ないなぁ。
私は少し気を引き締めて調理を続けた。
そんな様子を見てかディーンさんは
「何度でも納得いくまでやって良いからね。」
と言ってくれた。
でもその言葉に甘えててはダメだな。
よし。
まずは、卵を2つボールに入れ白濁するまで煮込んだ鶏ガラスープを加えよくかき混ぜる。
混ぜ終わったら、細かく刻んだ山芋を入れて塩と醤油で味を整える。
後は油を敷いたフライパンに四角い型を置き、その中にさっきの卵液を流し込み加熱したら完成。
簡単で美味しい私流の前菜、そう卵焼きだ。
普通の卵焼きとは少し違うが、この味が私の作れる中では一番の卵焼きだと思う。
さぁディーンはんはどんな反応をするかな。不安もあるが不思議と少しワクワクしている自分もいる。
私が卵焼きをお皿に盛り付けていると、完成した雰囲気に気付いたのかディーンさんが声を掛けてきた。
「ん、完成したかい?」
「はい。いまそっちに運びますね。」
「早かったね。でもその顔から見るに自信も有りそうだね。」
そんな自信に満ちた顔してるのかな私は。
少しだけ恥ずかしくなったがとにかく食べてもらったら結果は分かる。
「自信ありってこともないですけど、とりあえず食べてみて下さい。」
少し困ったように私が言うと
「はい喜んで。いただきます。」
少しだけ板についた合掌のポーズをとり、ディーンさんは卵焼きを口に運んだ。