最高のからあげ2
私は厨房に立つと、まずは手を洗い調味料の確認をした。
ディーンさんが恐らく私の事を考え用意してくれたのだろう、私の国の調味料が揃っているのを見て嬉しくなった。
これだけのものを揃えるのには、相当苦労したはずだ。
せめて、美味しい料理で恩返ししたい。
そう思うとやる気も俄然沸いてきた。
そして、私は調理に取りかかった。
私の持つ知識と技術をフルに使い、約一時間の時間を使って料理は完成した。
私は料理をディーンさんの元へ運ぶ。
「どうぞ、私が出来る最高の唐揚げです。よろしければ感想を聞かせて下さい。」
ディーンさんはその声をうけ、嬉しそうに微笑むと
「うん、とても美味しそうだ。じゃあ、お言葉に甘えて、頂きます。」
そう言って私の作った唐揚げを口にした。
ディーンさんは口にした唐揚げをしばらく味わうと、真剣な顔へとその表情を変え、静かになった。
静かに二口三口と食べる手だけを進めていった。
もしかして、口に合わなかったのかな。
美味しく無かったんじゃ。
奴隷時代で、私の感覚がおかしくなって美味しい料理が作れなくなっているのかも。
私の頭の中に次々とそんな不安がよぎる。
だが、そんな不安とは裏腹に、ディーンさんは口にした唐揚げを飲み込むと、真剣な表情で言った。
「美味しい、美味しすぎる。
まずこの唐揚げ、唐揚げとしてオーソドックスなモモ肉ではなく、むね肉を使っているね?
それでいて、一瞬モモ肉かと思うほどの柔らかさとジューシーさ。
そして、むね肉としての利点であるサッパリ感はそのままだ。まるで、2つの部位の良いところを寄せ集めた幻の部位でも使っているのかと思ってしまうほどの完成度だ。」
「それに衣も薄めの衣でカラッと仕上げることで、噛むと衣に吸収された油ではなく、鶏肉本来の旨味が溶け出したジューシーな汁が口の中を襲ってくる。」
「この味付けもこの短時間で、鶏肉にしっかりと味を染み込ませている。
醤油ベースのタレであることは分かるが何だろう。何種類もの味が重なり、1つの味へとたどり着いており、それでいて鶏肉を殺していないこの味は。思わずビールが呑みたくなってしまう、まるでビールのお供は自分だけと言わんばかりのこの旨さ」
「なぁ桜、良かったらこのレシピ教えて貰えないか?」
私は急に饒舌に語り出した彼に驚き、ポカンとしていたが 、話掛けられることによって意識を戻し返事をした。
「は、はい、私で良ければ!」
少し変な返事になってしまったが私はレシピの説明を始めた。
まず用意するものは
1 鶏むね肉 300g
2 揚げ油 適量
3 片栗粉 適量
4 ★醤油 大さじ4
5 ★酒 大さじ3
6★ みりん 大さじ3
7★ 一味 小サジ1
8★ はちみつ 大さじ1
9★ 胡椒 適量
10★ニンニク 一かけ
11 ★ 生姜 一かけ
12 ★ 玉ねぎすりおろし 八分の一
13 ★ カレー粉 小さじ一
①まず、★の調味料を全て混ぜ合わせておく。
次に、鶏むね肉を30g程の一口大に切っていく。
この時むね肉の皮目に切れ込みを少しだけいれておく。
②その後、むね肉にフォークで穴を開ける。形が崩れない程度に多めの穴を開け、出来たら密閉出きる容器に容れ、★とよく混ぜ合わせる。
この時、手で肉に★を刷り込むようによく揉む。
③出来たら冷蔵庫に30分ほど容れて、タレが染み込むのを待つ。
30分立ったら、冷蔵庫から取りだし常温の場所で15分ほど待つ。
④15分立ったら鶏肉を振るい、付き過ぎたタレを落とす。
次に片栗粉を軽くまぶす。この時、余分な片栗粉は出来る限りはたき落としておく。
⑤油を160°でセットし、鶏肉を落としていく。
この時、鶏肉を天カス掬いなどで軽く擦り、更に余分な衣を落とす。
時折、鶏肉を持ち上げて空気に触れさせながら2分間揚げる。
2分立ったら一度鶏肉を引き上げ、2分待つ。
この間に油の温度を170°まであげておき、2分立ったら1分半揚げる。
⑥揚がったら油を出来る限り落とし、キッチンペーパーで一度鶏肉を包みこみ、油を落としたら完成。
私が話終わると、ディーンさんは何やらブツブツ言っている。
そして、しばらくたった後に私の方を見て、「桜、君はもしかして料理がメチャクチャ出来るんじゃないか?」




