最高のからあげ
目が覚めた時には、太陽は沈みかけ外はオレンジ色の綺麗な夕焼けに包まれていた。
いつもは誰かにたたき起こされることから一日が始まる。
逆に言うと、起こされるまでは何とか睡眠を取るように体が出来ているのだろう。
そんな考察を頭の中でしていたが、そうしてベッドでじっとしていても仕方ない。
私は寝起きのボーッとしている頭のままで、とりあえずディーンさんを探さなければと立ち上がった。
部屋を出て、隣の部屋を見たが当然まだ寝ているはずもなくディーンさんはいなかった。
となると一階だろうと思い、私は階段で一階へと降りる。
階段を降っている時、とても良い匂いがした。
香ばしいニンニクの匂いがする。
これだけでお腹が空いてくるのだから私も単純だ。
一階へ降りると、ディーンさんは何やら料理をしているらしく私に気付いてはいない。
後ろから観察すると、どうやら鶏肉を調理しているようだ。
私はとりあえず、こんな遅くまで寝てしまったことを謝った。
「あの、すいませんこんな時間まで寝てしまって、、、」
その声にようやくディーンさんは私に気付いたようで
「やぁ、おはよう。昨日はよく眠れたかい?」
そんな風に笑顔で聞いてきた。
良かった、怒っていないみたいで。
私はその質問におかげさまでと答え、早速何か手伝えることはないかと聞いた。
「あぁ、今は特に無いよ。ありがとう。二日後から店を開けようと思うからその仕込みをしていたんだ。」
どうりで、こんな良い匂いがしたわけだ。
さっきはニンニクの匂いにしか気付かなかったが、よく見れば肉や多くの香味野菜がそれぞれ調理されているようだ。
「あの、今は何の仕込みをしているんですか?」
私がこう質問したのには、訳がある。
私の見た感じ、使われている調味料や材料はこの国の物ではない。
そう、これは私のよく知る
「これはね、君の国の料理だよ。これは今夜の夕食にと思っていたものだけどね。多分気付いてると思うけど、鶏の唐揚げって料理だね。」
やっぱり!
この材料ならそうかもとは思っていた!
それにこの料理は私の一番の好物だったのだから。
もう何年も口にすることは無かったが。
ならなおのこと、これは手伝っておきたい。
そう思っていると、私のそんな様子を察したのか
「そうだ、やっぱりこれを手伝ってもらおうかな」
と言った。
私はその問いに力強く答え、ディーンさんにエプロンを借り厨房にたった。
「今朝のうちにこのエプロンを買っておいたんだけど、似合うようで良かったよ。」
そのエプロンは、桜の花が刺繍されたピンク色のエプロンだった。
「この料理は私の得意料理です。良かったら私に任せてもらえないですか?」
私はディーンさんにせめてもの恩返しと思い、そう提案した。
ディーンさんは嬉しそうに笑い、任せたよと言うと私の肩にポンと手を置いた後、客席に移動し腰を掛けた。
さぁ、何年ぶりかの料理だ。
またこうして好きな料理が出来る幸せを噛みしめ、エプロンをキュッと結んだ。