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extra etc. fetus-  作者: サイタマメーカ
対象、米崎稲峰。48時間
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TV案内

 黒句轆轤と伍波百花は、数分前、対象である米崎稲峰が入って行った出入り口に来ていた。

 入り口に立っているのは黒句と伍波だけで、ほかのメンバーは皆別々の場所で待機している。

『15。金崎修吾先輩、なんで俺と伍波ちゃんが局の中に入る係なんすか?』

『囮には丁度いいだろ。どういうわけか米崎は一派の人間を一人も連れていない。状況としても文句なしだ。新米はともかく、おまえは囮のために生まれて来たみたいな男だろうが』

『うはー、ヤな言い方ぁー』

 そうは『無言通話』で述べつつも、黒句もこの人選には少なからず納得していた。黒句たちの目的はあくまでも米崎稲峰の殺害である。それならば、米崎が室内に入った後、規定された出口から出て来たところを叩いた方が労力が少なくて済む。その方針に少なからず助力するのが、黒句たちのような「中に入って対象を外に誘導する存在」だ。根気と確実さが求められる難解な仕事はベテランに任せるとすれば、そう言った役割を新米の伍波と、今回の仕事において彼女の相方を任せられた黒句が担当するのは当然のこととも言えた。

「なんて、ただの詭弁ですけどねー」そういった理由を並べられても、黒句には新米の伍波を米崎というテロリストに立ち向かわせる正式な理由がみつからなかった。たぶん、向こうも正式な理由、なんてものを述べられやしないだろう。「伍波ちゃん、一応、ここで待っててもいいよ? 米崎くんを巣穴から引っ張り出すのは、とりあえずは俺でやるから」

 その発言に、伍波百花はかぶりを振る。

「私も黒句さんと行きます。足手まといにはなりませんから」

 そーいう問題じゃないんだけどなぁ、と思いながらも、黒句は伍波をそれ以上説得することを諦めた。否定するのと一言「わかった」と言うのでは、どう考えても後者の方が簡単だ。

 黒句は、再度『無言通話』の所作、親指と人差し指を立て、手で受話器を作りその場にいるメンバー全員にテレパスを送る。

『これから中に入ります。そちらは狙撃位置から監視の方をお願いしますね』

『了解』

『分かった』

『新米をよろしく』

『女の子と一緒だからって張り切んなよ、センセイ』

 複数の思念による声、一部に冷やかしが混じったものが黒句の頭の中に響く。

 それをしばらく頭の中で騒がせた後、やがてぶつりと回線が切れたように頭の中に響いていた声は消滅した。

「これ、さ」

黒句はつぶやく。

「テレパシーって、着信拒否ができないから不便だわ。やっぱり携帯の方がいいわね」

 そんなことを、黒句は隣の伍波に呟いた。当の伍波は、無表情に首をかしげるだけだった。

 




『そこを右、かな』

 米崎稲峰は、携帯端末の指示に従いながら、まるでナビゲートを受けた車のようにテレビ局の中を進んでいた。その前に、一人の女性が通りかかる。

「あ」その女性は、米崎の顔を見るなり焦ったように狼狽し、すぐに携帯電話を取り出し始めた。それをうんざりとした様子で眺めながら、米崎は口にする。




「止まれ」




 その一言で、その女性は手足が痺れたように、両手で携帯端末を持ちながらその場に静止した。その様子を眺めながら、米崎は手にした携帯端末をゆっくりと持ち上げ、語りかける。




「どうやら、局の中にもまだ伝わっていない人間がいるようだ」




『そりゃま、仕事の入り時間がばらばらだからね。後に入って来た人は仕方がないでしょ』

 受話器からの言葉を聞きながら。米崎は女性に語りかける。




「そのまま仕事を続けてくれ。もっとも、俺のことは気にしなくていい。今ここで見たことは誰にも言うな。聞かれても知らぬふりをしろ。そうして、二度と思い出すな」




 米崎は女性の横を通過するその女性は、米崎が自分の横を通り過ぎた後でも、固まったままずっと同じ方向を向き続けていた。多少歩いたところで米崎はその様子を確認もせずに、視線は前を向きながら、後ろにいる女性に対して口を開いた。




「もう動いていいぞ」




 その一言で、女性の足はようやくと言った風に動き出した。その様子を、局内に仕掛けられた監視カメラで捉えていた受話器の先にいる古木は確認する。女性は米崎の言う通りに、自分の仕事に向かおうとしていた。まるでそこで起こったことが、本当に何でもなかったかのように。対して米崎は、そんなことなど興味のないように、通信端末に向かって語りかける。




「こちらのミスだ。気にしなくていい」




『そう』受話器の先の相手は興味もなさそうに短くそう述べる。『あと、入って来たよ』




「ほう」




 米崎は大した反応もせず、ようやく訪れた侵入者を意識する。




「数は、何人だ」




『確認できたかぎりじゃ二人かな。ま、分かってると思うけど、やっぱり映像処理か何かされてて、依然として見えるのは黒い靄みたいなもんなんだけど』




「別にかまわない。数だけでも分かれば十分だ」




 米崎は、歩きながら古木に口を開く。その眼には目の前の光景しか広がっていない。




「男だとか女だとか、巨大だとか矮小だとか、そんな情報は些末だ。ただ二人入って来た。情報としてはそれだけでいい。それで十分、対策と計画を建てられる」




 それから五歩ほど進んだところで、米崎は後ろで歩いている女性に対して、何かを思い出したように振り向いた。


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