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07 初めての魔法

 魔力を感知できた翌日、今度は自分の魔力を自由に操れるように訓練していた。


「いいですかー、イメージですよ! イメージ! 体の中を魔力が、自分の意思で動くイメージです!」


「はーい! 先生」


「……はーい、せんせい」


 コハク先生の授業は終わることなく続いていた。昨日1日で終わるかな? なんて思っていたけど、案外このキャラが性に合うらしい。面倒見のいいお姉ちゃんみたいだ。実際この中では、前世と現在を合わせたら一番年齢が……


「っ!?」


「ユ~ウ……」


 はっ!? なんだ今の寒気は? そう思っていると、コハクからゾッとするような低い声が聞こえた。


「ど、どうしたのコハク?」


「い~い~え~、別に~」


「そ、そう? あ、あはは……」


 とりあえず年齢については触れるべきじゃないな……、と女性の恐ろしさを感じた。


 それはともかく、俺は魔力を操る訓練を再開した。

 魔力を動かすことは、とにかくイメージすることによる操作だそうだ。熟達すれば無意識でも操作できるようになるらしい。


 そういうことなので早速イメージして魔力を動かしてみた。

 魔力を感知することは昨日できたので、その要領で体内の魔力を感じとって動かしてみた。


 まずイメージするのは、魔力が血液のように体中を循環するイメージだ。


 すると、魔力が体全体を覆うように薄っすら展開された。きっと体内もこんな感じなのだろう。ただ、魔力が身体からある程度離れると空気中に霧散するように溶けていってしまう。

 なので、血液のように循環するイメージと、漏れ出た魔力を衣のように纏うイメージを同時にしてみた。すると、さっきとは異なり魔力は俺の身体から離れずに展開されるようになった。

 そして、それと同時に力が湧いてくるような感覚がした。これがコハクの言っていた、魔力による身体強化なのだろう。

 コハクの講義は結構分かり易いため、すんなり理解できていたが、実際に体感するのとではやっぱり違うなと思った。


 ただ、この強化方法だと身体全体は強化できるが、部分的な強化ができない。だから、部分的な強化を施すときには違うイメージが必要となる。


 う~ん、どんなイメージが必要なんだろう、と考えながら手のひらをグーパーしながら考えていると、唐突にアイディアが閃いた。物は試しと、早速実験してみることにした。


 すると――


 バチバチッ


 電気が迸るような音とともに、更に強化されているような感覚を得た。そして、強化している腕をよく観察するとわずかに電気を纏っていた。


「よしっ! 成功だ!」


 興奮した俺はその場で跳ね上がるような勢いで喜んだ。なんせ、初めての魔法だ。

 発動と言っても、派手なものではないけれど、一応強化魔法と言われる類の魔法だ。これが結構嬉しい。


 ついでに俺がイメージしたのは、神経伝達の電気信号だ。それなら瞬時に魔力も移動できるし、部分的にも強化できるのではと考えたのだ。細かい原理などはわからないが、とりあえずそのイメージがしっくりきた。そして嬉しい誤算は、漏れ出た魔力が微量だが電気を纏っていたことだろう。これをもっと練習すれば武器になるんじゃないかと思った。それに雷属性なんてカッコよさそうな響きだ。


 あぁ、雷属性と言えば、そういえばこの世界の魔法は正確に言えば適正属性というのは無いそうだ。イメージすれば使える魔法であるからして、そのような適正や不適性などはないらしい。


 けれど、現状は異なるそうで、なんでも苦手意識を持っているものに対しては威力が大きく減衰してしまい、まともな魔法にならないらしい。それを勘違いした人々が、適正が存在するんじゃないかと決めたそうだ。

 例えば、小さい頃に川で溺れかけた子供などは、成長しても水属性系統の魔法などは全然使えないなどの例があるらしい。

 他にも、貴族の女性などは土属性系統の魔法が全然使えないなどの報告もあるそうだ。恐らく泥遊びなどが大っ嫌いなんじゃないかな、と考えると納得できるような気がする。

 これだけ聞いていると、魔法が発動できないのは本人の苦手意識が原因だろうという考えが出てきてもい良いんじゃないかと思える。

 ただ、現状ではそういう細かい理由などは本人しかわからない。結果、適正・不適正の考えが浸透してしまっているそうだ。

 


 それからも、しばらく魔法の訓練をして今日の訓練が終わった。


 ついでに俺たち3人の1日の予定としては、午前に戦闘・狩りの訓練、午後に(コハク先生の)魔法の訓練だ。魔法の訓練自体は完全に俺たちだけなので、通常は自主訓練となっている。


「……くんくん、きょうの夕食は腸詰?」


 そんなことを考えていると、クロナが食堂の方から漂う匂いに反応したのか、夕食の中身を推理していた。


「……ん、はやくいく」


「うおっ!? ちょっと、引っ張るなって!」


 気付くとクロナに袖を引っ張られ、食堂の方へ引きずられていく。クロナは意外に食い意地が張っているのか、毎食、食事の時間になるのが分かると真っ先に食堂へ向かう癖がある。生まれてから食事をしなかった影響か、一度食事に魅了されたクロナは毎回こんな調子だ。


「気を付けてね~」


「お、おい助けろコハク!」


「ふふふ」


「あ、ちょ、ちょっと! 引っ張らないで! 普通に歩くから!」


「……ん、だめ。はしる」


「え!? ちょっと! やめてぇーーーー!」


「ふふふ」


 こうして今日も1日が終わった。


 できればこんな日が続けばいいな、と夕暮れに染まった空を見上げながら思った。


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