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06 幼少期

 あたりが寝静まった夜の孤児院で、1人の職員が施設の見回りをしているとき、


 ――コンコンコン――


「あら? こんな時間に誰かしら?」


 入口の方からドアをノックする音がした。


 ――コンコンコン――


 こんな時間に来る人物に心当たりのない職員は、警戒しながらも一応来客かもしれないと思い対応に出た。


「はい、今出ますねー」


ガチャ


「あれ? 誰もいない? いたずらかしら? ……あら? この子達は……」


 職員が入口のドアを開けるとそこには誰もいなく、一瞬いたずらかと思いドアを閉めようとしたときにそれは目に入った。職員の目に入ったのは、3人の赤ん坊と、その子達を包む布に挟んであった1通の手紙であった。




◆◇◆◇◆




 俺は昨日5歳になった。


 結局あの世界で俺は、異世界に転生することを選んだ。そして、どうやら俺とクロとハクは揃ってこの世界に転生したみたいだった。しかもクロとハクは、クロナとコハクという名に変わり、人として転生していた。そして俺たちは現在3人揃って孤児院で生活している。


 なんでこんな事を知っているのかというと、それは5歳の誕生日を迎えた昨日、俺は前世を含めた記憶を全て思い出したからだ。理由は俺たちがこの孤児院に預けられた際に一緒にあった手紙らしく、文字を習っていた俺たちはそれを読んだのだ。するとその瞬間、前世を含めた今までの出来事が頭の中に流れてきた。その際にクロとハクの事についても触れられていて理解した、という流れだ。


 せっかくの新しい人生を、前世の記憶を持ってやり直せるんだ。不慮の事故なんかで死んで、またあの世界に行くのはごめんだ。けれど前世でも現世でも、命というのは存外軽い。


 さらに悪いことに、この世界では明確な脅威が存在する。一歩街から外に出たら力が全てだ、という地域も少なからず存在するのだ。


 だから俺はこの世界を生き抜く力が欲しい。一生を街中で暮らすのもごめんだし、ちょうどいいだろうと思う。

 幸い、この孤児院では将来の進路を決めるため、また生きていく方法を学ぶために必要な技術を教えてくれる。狩りや戦闘の技術などもこの孤児院では教えてくれるらしく、俺は将来冒険者を目指すために教えを請うことにした。



「……ねぇ、ユウはボウケンシャになりたいの?」


 そういって俺に寄りかかってきたのはクロナだ。クロナは名前の由来でもある、肩の辺りで切り揃えた綺麗な黒髪をいつも俺に擦り付けるようにして甘えてくる。猫だったときの名残か、頭の上には黒い猫耳と、腰の辺りからは尻尾が見える。獣人というやつだろうか? 性格は、記憶を取り戻す前から変わらず甘えん坊だ。ついでにユウという名前は俺のことだ。名前が前世と変わっていない点はありがたいが、若干複雑でもある。


「ああ、そのつもりだけど……」


「……そっか、コハクは?」


「私? 私も冒険者になりたいわ」


 クロナは俺に寄りかかりながら、今度は横にいるコハクに話を振っていた。話を振られたコハクはさほど迷うこともなくそう答えた。

 人となったコハクの容姿はクロナとは正反対で、腰まで伸びた綺麗な白髪をしている。身長は今の俺より高い。性格は記憶を取り戻す前からしっかり者である。元はドラゴンだが、今の姿にその名残はない。ただ、その代わりなのか全般的に能力は高い。それは運動能力や頭の良さなどにも反映されている。本人曰く、ドラゴンにもいつか変化できるようになるらしいが、基本はこの姿がメインとなるらしい。


 これは俺の勘だが、おそらくコハクは同族の行方などを気にしているのだと思う。俺たちが転生した時代は、コハクが死んだ時に近いらしい。例え転生した時代が死んでから多少年月が経っていても、ドラゴンというのは長命であるらしく、会える可能性は十分にありえるだろう。それなら同族がどうなったか気になるのは普通だ。それに……いやこの話はまた今度だ。


「そう言うクロナはどうなの?」


「……わたし? ……わたしはユウについていく」


「……それでいいのか? 危険だと思うぞ」


「……ん、だいじょうぶ。ちゃんと考えてる」


「……まぁ、まだ時間はある。しっかり考えような」


「……わかった」


 クロナはまだクロだったとき、すなわち生まれた直後から俺といた影響のせいか、若干俺に依存している節がある。そしてそれは記憶が戻ってからは顕著だ。まぁ、だからと言って1人だけ仲間外れということにはしたくないが、いつかはどうにかしたいなとは思う。だから離れてくれないかな……

 

 とりあえず今は、力を身に着けることを優先しようと思う。まだ身体が完全に成長しきっていない俺たちは、今下手に筋力をつけるべきじゃないと思う。よって今覚えるべきことは体捌きや力をさほど必要としない技術、その他には魔法などだろう。前者の技術に関する部分はここで徐々に習っていくとして、後者の魔法はコハクという魔法に関する先輩がいるので、最適な訓練を教えてもらうことにした。

 

 聞くところによると、ドラゴンは幼いころに魔法の基礎的な部分を全て詰め込み、そのあとにゆっくりと完成度を高めていくそうだ。そうすることにより、小さい頃から最低限の自衛手段を手に入れられるらしい。コハクもそう教育されたことで、ドラゴンにとっての魔法の基礎を覚えているそうだ。

 ここで重要なのは、ドラゴンはこの世界でも最上位の生物であるということだ。当然魔法の技術も相当なものなので、その基礎を知ることだけでも結構なアドバンテージを得られそうだ。



「じゃあ、まずは魔法についての知識を身に付けましょう。」


 あれから俺たち3人は、将来冒険者を目指すことに決めた。孤児院の中には既に何人かの子供たちが冒険者になるために訓練をしている。なので俺たち3人も、明日から訓練に参加することになるそうだ。

 そのせいもあってか、魔法についてもコハクが今日から教えてくれることになった。


 そして現在、俺とクロナはコハクに魔法の講義を受けている。


 コハクはどこからか持ってきたのか、メガネをかけて先生みたいな雰囲気を出している。……突っ込むべきか?


「まず、魔法とはどのようなものか知っていますか?」


 そう思っていると、コハクの講義が始まったようだ。しょうがない……


「しらないで~す。コハク先生!」


「……わかんない。せんせい」


「……も~、困った子たちね。いい、魔法とは体内にある自分の魔力を使って、世界に干渉して術を行うことを指します」


 先生と生徒という設定での会話だが、意外に、俺もクロナもコハクもノッテきている。その後も、コハク先生の魔法講義がしばらく続いた。

 そして、その後は実技ということになった。


「――ですから、まずは自分の体内の魔力を感じ取れるように訓練しましょう。いいわね?」


「はーい!」


「……はーい」


 その後は魔力を感じる訓練を行い、日が暮れる直前辺りで俺とクロナが魔力を感知することができた。


 その日から俺たちは魔法と戦闘技術について学んでいくのであった。


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