04 プロローグ4
あれから女性の話を聞いたが、内容としてはこうだ。
まず、あの塔の内部は、各階層で世界が違うそうだ。ただ、あの塔の内部にある世界は全て、今目の前にいる女性が創った世界であるらしい。
世界を創ることは彼ら彼女らのある意味義務だそうだ。ただ、創った世界を改変しようが、別の世界を創ろうが、そこには何か義務は存在しないらしい。なんでも、世界を所持すること自体が大切なんだそうだ。ただ世界を創るときは大抵最初の世界は失敗するらしい。星も大気も水も生物も存在しない世界が出来上がるそうだ。そこから、恒星の作成と他の星までの距離や、隕石などの外的要因、各星の環境の調整など色々試行錯誤して初めて、生き物が存在できるかもしれない世界の基盤ができるらしい。そこまでに至るまでに膨大な数の試行があるらしいが、地球のような生き物ができる星が宇宙の中に生まれるまでには更に時間が掛かるそうだ。ただ、俺だったら想像するだけで嫌になるくらいの年月と手間も、彼ら彼女らにとってはそれほど苦痛に感じないらしい。そして、生命が誕生した星の環境をデフォルトとして色々なパターンを組み込んで、色々な世界を創っていくそうだ。
俺が訪れた色々な階層世界はほとんどが、地球のある地点で手を加えて分岐していった世界であったらしい。ただ、なかには別の分岐元から派生し、完全に関係のない世界もあったそうだ。
そして、これが問題なのだが、基本的に分岐元が一緒ではない階層世界には入ることができないそうだ。じゃあ、なんで俺が入れたかというと、どうやら俺は別の世界の因子が混ざっているそうで、そのためか、侵入を拒まれなかったらしい。
どうやら、先ほどの行為は俺が本当に別世界の因子を持っているかどうかを調べる行為だったそうだ。ついでにその階層は、ハクがいた階層だそうだ。
そして、今後の俺たちなのだが、どうやらこんな事態が初めてらしく、処遇が曖昧なのだそうだ。そこで、選択肢としては、このまま塔に戻り初期化されるか、特別措置として、このままではないが転生させてくれるそうだ。塔に戻れば、次にどんな生き物になるか分からないが色々な世界へ転生できる可能性を秘め、このままに近い状態で転生する場合は、俺とクロがもといた地球に転生するか、ハクがいた世界にしか転生できないらしい。なんでも、持っている因子の世界にしか、今だと行けないらしい。ちなみにハクの世界は魔法と科学が発展した世界らしい。ただ細かいことは、向こうで調べて欲しいとのことだ。
その他にも、女性はいろいろと教えてくれた。
それからも、いくつか女性に対して、俺は質問した。
――なぜ、俺は別世界の因子を持っていたのか。
――クロやハクがなんで光り、クロは何故、急激に成長したのか。
――転生する際は、どんな条件なのか。
などの質問を女性に聞いてみた。
すると女性は、別世界の因子を持っていることは教えられないといったが、他のことは教えてくれた。
まずはクロやハクが光った理由だが、魂の状態で接触した際に俺の因子を受け取ったからだそうだ。魂というのは他者の干渉を受けやすく魂同士の接触は、接触したものの間に絆を生み出すそうだ。それが、どんな絆かは場合によって異なるそうだが。そうして接触した俺たちの間にも絆ができ、その際に俺の因子が、この2匹にも移ったらしい。クロの急成長もこの点に起因するそうだ。
最後に転生する際の条件に関しては、ある程度優遇してくれるそうだが、細かいことは転生先にてわかるらしい。その後女性は俺たちにそれぞれ確認を取り、これからどうするか決めてくれた。
「そろそろ決まりましたか?」
女性からそう言われ、俺たちは互いに顔を見合わせた。
「それじゃあ、俺は――」
◇
「では、いってらっしゃい」
女性がそう呟いた後に、1人と2匹は光に包まれ、やがて消えていった。
光が完全に収まったことを確認すると、女性はどこからともなく呼鈴を取り出した。
――チリンチリン――
「御呼びでしょうか」
すると何の前触れもなく、1人の使いが現れた。
「えぇ。No.――――を見てきて、何が起きているかを報告しなさい。特にあの男性がいた場所周辺を頼むわ」
女性は先ほどまでの態度を若干崩しながら使いのものへと指示を出した。
「かしこまりました」
すると使いは、ネクタイを締め直し、鞄を持ち上げ、その返答と共にその場から消えた。
「ふふふっ、これからどうなるのかしら? 楽しみだわ。ふふふ……」
しばらくの間、女性の笑い声は広間に響くのであった。