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第五話 迫り来る恐怖(5)

 壮絶な銃声音が響く! 警官と子分らの銃撃戦が開始されたのだ。

 銃を構え一目散に発射装置へ走る警官たちと、驚きを顕わにして急いで物陰へと隠れる厳鬼げんきたち。

 それでも、逃げ遅れた子分を目にした警官たちは、躊躇うことなく腕を撃ち抜き、2人の男をその場にひれ伏せさせた。……が、あいにく他の子分には上手く逃げられみたいで、奴らの姿がテーブルや棚の裏に消えたかと思った直後、こちらに向かって撃ち返してきた。

 そうなると、警官たちが懸命に前進を試みたところで、雑多な銃撃が待ち受けているのだから簡単には突破できない。結局、装置に辿たどり着く前に、彼らはほぼ中央の柱で釘付けとなってしまった。

「クソッ! ここまでか。あと少しというところなのに……」と信二もこの状況に嘆く。仲間同様、彼もまた残念ながら柱を盾にするしかなかったからだ。しかも、もう残り時間があとわずかだ! 現時点で既にカウントは2分を切っていた。急がなければ、弾道ミサイルが発射されてしまうのだ。信二は焦った!

 そこで、この場をやり過ごすのに何かよい手立てはないものかと必死で考えた。

 そうして、思わず手にした物は……発煙筒!

 忽ち彼は、前方へ投げ入れた。その途端、見る見るうちに白煙が充満して部屋は真っ白になる。つまるところ、彼が選んだ戦法とは、一か八か、敵の目を欺くために発煙筒の煙で部屋を満たしてから、その中を一気に走ることで発射装置へ辿り着こうという策だった。

……そうすると、どうにかその目論見は当たり、首尾よくすり抜けられそう? 煙幕のお陰で奴らは敵味方の区別もつかず、発砲ができない様子だ。よって信二は、その隙に乗じて、素早く装置へと向かった。

 そして……漸く、見つけだしたぞ!? 目の前に電子機器だ。これさえ破壊すれば、全てが終わる。……と思ったものの、次の瞬間、予期せぬ事態が起こったではないか!

――1発の銃声が鳴り響く!?――何と、信二が、銃弾を受けてしまったのだァー。

 忽ち彼は、もんどりうって倒れ込む。「ううっ、駄目だ。やられた!?」と悲痛な声を上げるとともに。

 全く、何てことだ。胸に被弾してしまうなんて!……

 信二は、心底消沈した。床に横たわったまま、深手を負ったかもしれない胸部の傷を手で押さえる。

――しかし、いったいどこから狙われたのだ?――それでも、真っ先にそのことが脳裏を掠めたので、痛みを堪えながら、目を見開き辺りを探った。

 すると、装置の影に隠れるようにして銃を構える厳鬼の姿が、薄煙の中から浮かび上がった! どうやら先を読まれ、待ち伏せされていたみたいだ。――よもや、こんな手法に遭おうとは、想像もしなかった――

 それなら、どれほどの致命傷を負ったのだろうか? 行き着くところ、それが一番の懸念だった。信二は、一先ずうつ伏せの状態で煙に紛れることにした。

……が、これで奴らの攻めが、終わった訳ではなかった! 床の上を歩く安物のスニーカーが目に入ると同時に、それが徐々に近づいてくることに気づいた。子分たちまでも、彼の生死を確かめるため、そろりそろりと寄ってきたのだ。もし生きていたらとどめを刺すぞと言わんばかりの様相で。

 まさに、絶対絶命! こうなれば静かに敵の出方を待つしかない。信二は緊張しつつ息を潜めるのであった。


 そして、とうとう3人の子分が、ほんの側まで迫ってきた!

 信二の運命は如何に……

 だが、ここで、「よせ、来るな!?」励声れいせい一番、厳鬼の声が、先々を読んでいるかのごとく聞こえてきた!

 やはり見抜かれていたか?……としても、もう遅いのだよ。

――3発の銃声音を響かせた!――まさしく信二の発砲! 子分たちの足を撃ち抜き、「ぎやーー!」奴らがその場でのたうち回るのを見届ける。……とどのつまり、信二は何の負傷もしていなかったのだ! 何故なら、彼も装備は怠らない――上着の胸には弾痕が見えようとも、銃創を阻む〝防弾チョッキ〟もその下に確認できた――

 よし、ならばこの機こそが、最終局面の激闘を制する瞬間だ! 発射装置はすぐ目の前。そのうえ、白煙に紛れて素早く動けば、厳鬼も発砲できないはず……。そう踏んだなら、信二はすぐさま立ち上がり、装置に向かって――発砲音も喧しく――何発もの弾丸を撃ち込んでいた!

 ただちに金属の破裂音と電気のショートするスパーク音が鳴り、破損部から発生した火花放電が全システムを覆い尽くした。しかもその放電が、近くにいた厳鬼の銃にも帯電したせいで、見事にその小筒を弾き飛ばす。立ち所に厳鬼は丸腰となれば、続いて装置にも火の手が上がり、一瞬の間に全システムが炎火に覆われた!

 遂に、発射装置が破壊されたのだ!

 信二が、ミサイル発射を食い止め、ミッションは、ここに完了した――――?


……小さな地震。

 んっ? けれどその直後、どういう訳かほんの僅かだが、地面の揺れが始まったような?……。それを逸早く、信二は感じ取った。とはいえ、すぐに己の勘違いだと思い直す。発射装置は疾うに火達磨になっているのだから、どう考えても機能する道理がなかった。

 が、次の瞬間!――突如、地を揺らす大轟音が響いた!――

「な、何だとー?」全く予想だにしない、驚きの動勢に転じていた。ロケット煙がけたたましく地面を叩きつけて噴出し、物凄い爆風が周りの物を激烈に震わせたのだ!――あの弾道弾が、爆音を轟かせ飛び立とうとしている?――

「そ、そんな、バカな!……」これには信二も、心底慷慨した。目の前の出来事を現実とは捉え切れず、夢ではないのかと疑ってみるも……事実は変えられないもの、確かにロケットは発射されていた! ならば、いったい何が起こったというのか? 彼は茫然自失となってその場に佇んだ。

「わははははは……」するとそこに、厳鬼の笑い声が聞こえてきた。

 信二は、思わず声を絞り出して訊いた。

「どういうことだ?」と。

 それに対して奴は、薄ら笑いを浮かべて、

「ふふふ、ご苦労なことですね。ダブルシステムだったのよ。もう1台の発射装置が君らの知らない所で作動してた訳さ。当然こちらがおとりでね。そうとは知らずに引っかかりましたか。ははははー、お笑い種ですな、警察諸君」と答えたのだった。

「……別にもう1台の装置があった?」

 何という結末だ。信二たちは予想だにしない策略に嵌っていたという訳か。全ての作戦が最初から無駄で無意味なものだったとは!……

 これで、とうとうミサイルが市の中心街に命中する。町は巨大爆発で跡形もなく破壊され、人々が逃げ惑う地獄の惨劇になるのだ!

 信二たち警官は、絶望感に苛まれた。そうして一人二人と、順次うな垂れては、悲痛な表情へと変わっていく。彼らは唯々力なく立ち尽くすのであった。

「うわっはははは――」そこに、厳鬼の笑い声が聞こえてきた。

 まるで警官たちを嘲弄ちょうろうするかのように、その声だけが、辺り一面に響き渡ったのだ!


……ところがその時、刻々と近づいてくる、微な音を耳にした! 高音のノイズで満たされた飛行音のような? この周波からすると小型ジェット機の音、戦闘機か? 否、違う! もっと小型の……

――その途端、ジェット噴射音が突き抜けた!――超高速で飛行し、信二たちの真上を飛び超えて行ったのだ。

 それを信二が、窓越しに垣間見たなら、「人が……飛んでいる」驚愕の一声を口にする。

 あり得ない! としても、間違いなく黒のジャンプスーツとゴーグルを身につけた、生身の人間が大空を飛んでいた!――正確に言えば背中にジェットエンジンを搭載した翼があり、その機体を背負っての飛行――

 そして、それを操縦しているパイロットは?……

 信二が叫んだ。

「あ、あずまさん!」

 そうだ。その強者は、東だった! 


 東九吾が、ジェット・マンとなって、飛来したのだー!




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