表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

第六話 暴かれた真実(8)

 そんな中、上空では……

「ピピピピッピッ、マーク2XX、状況を報告せよ」とF-15のパイロットへ、本部からの無線が入る。

 それを受けて、パイロットは答えた。

「こちらマーク2XX、現時点でまだターゲット存続。そして只今、タンカーを脱出しようとするポットを確認。続々と入水を完了し安全地帯へと非難している模様。……ただちに第二次攻撃に移る。ラジャー」


 突然、金光は海面を見下ろした。何かを感じ取ったのだろうか?……。どうやらタンカーを離れていく、数艇のポットに気づいたみたいだ。そのため、

「どこへ行く! わしを置いてどこへ行くんだあー」と海に浮かぶポットに向かって、叫び始めた。とはいえ、その答えが返ってくる訳もなく、代わりに冬雄の釈明が聞こえてきた。

「無駄だよ。俺が全員に逃げろと命令した。もう俺たちしか残っていない」と。

 するとその時! 戦闘機の機影が、急降下してくるのを目にする。これは何事?……。第二波の始まりか!

 そう思った瞬間、空対空ミサイルが、無慈悲に発射された! 銀色の鉄の矢が、音速でタンカー目掛けて一直線に迫り来る。次こそ撃破される。もう誰も阻止はできないのだ!

「うわぁー!? 助けてくれ」これには、金光も慌てて逃げ出そうとした。

 だが、冬雄が瞬時に押さえ込んだ。逃がさないように腕を掴み、

「父さん、悪足掻は止めよう。俺が一緒に死んでやるから」と覚悟を決めた態で、この時を待っていたかのごとく諭した。次いで東の方を顧みて「早く、姉さんを非難させるんだ!」と叫んでいた。

 東も、その要請に異論はない。咄嗟に桃夏を抱え込んだなら、一気にタンカーの後部へ走り出した。

「ふーゆーおー!」一方、桃夏は離されながらも渾身の声で呼んでいた。

 その声を聞いてか、一瞬微笑みを見せ、振り向く……冬雄。


 その途端!?

――巨大爆音が、猛烈に空気を震わせた!――サイロに命中したのだ!? 恐ろしいほどの火柱が上がり、飛び散る残骸と火粉で天は満たされ、瞬く間にその場を灼熱と化する。それはまるで、うごめく真っ赤な魔獣が出現し、全てを焼き尽くそうとしているかのようだ。そして冬雄たちは、激しい炎の真っ只中……爆発に飲み込まれていた! さらに、その凄まじい爆破の衝撃によって、タンカーは上下左右に強震動を起こし、全ての物を床に叩き落とした。

 東たちも、揺動には抗えず、その場に蹲るのみだ。ただ、どうにか直撃を避けられ、今のところ2人は無事だった。それでも、まだ危険極まりないことに変わりはない。この船から急いで逃げ出さないと消滅してしまうぞ!

 東は、ただちに桃夏の手を取り立ち上がった。続いて、脱出用ポットを探そうとした……訳だが、ここで桃夏が、意外な行動をとった? こんな主戦場の中なのに、えっ! いきなり東へ〝口づけ〟をしたのだ! 途方もなく燃え盛る船上で、烈火の炎を背景に、一時彼の唇を奪っていた。

 東は、面を食らう……

 そこに、瞳を輝かせて彼女が囁いた。

「東さん、最初に会った時からこうしたかったの」

 突然の行為に、唖然とするばかりだ。彼は、知らぬ間に桃夏の手を離していた。

……と、その直後、「ごめんなさい」という言葉が彼女の口から告げられた後、思いも寄らない結末に――

 何と、彼女はすぐさまきびすを返し、炎の内部、冬雄の元へ、駆けだして行ったではないかァー!

 この突拍子もない謝絶には、東も驚くしかない。

「も、ももかぁぁー!?」と立ち所に叫んだ!……が、次の瞬間!?


――――超巨大爆発音!――――世界を焼き尽くすのではないかと思えるほどの猛火を出現させると同時に、轟き渡った。弾道ミサイルの最強最大爆発が天地を揺るがしたのだ!

 甲板、否、船の側壁でさえ粉々にして、タンカーの巨体を無き物にするかのごとくありとあらゆる物を一瞬で宙に噴き飛ばし、それとともに強烈な熱線も激甚に放出させたため、その場は超高温となり、殆どの物質が蒸発させられていた。言わば、まるで元より何もない所に、突如海面から超大な火炎の塊が、空圧で生じた直径数百メートルのリング状の雲をまとわせながら、天を貫いたかのように……。しかも気づけば、何千メートルもの高度まで膨らんだ最大級のキノコ雲が、悠々と姿を現し――その存在は恐怖の印とでも言うべきか――大空を埋め尽くしていた!

 また、その爆風圧の残余だけでも海に与える威力は強大で、海面を荒立たせて大波をもたらしたなら、大型船ですら容易く沈没させそうな様相となっていた。

 とどのつまり、一見して何者をも接近することさえ許さないエネルギーで充満していたのだ!

……ただし、そんな恐ろしい狂瀾怒濤の状況下であろうとも、1艘の船が危険も顧みず近づいてきた。

 警視たちの乗った、警備艇だ。


 静かに、それでも着実に、そびえる雲山へ、進みくる!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ