9.監禁
粗野な雰囲気の町だった。
目抜き通りは活気があるけれど、男におぶわれて入っていった裏の道には、嫌な目をした男たちがたむろし、客引きの女が男を物色している。
一度は必ず私に目を向け、好色な目、好奇の目、蔑んだ目……負の感情丸出しの視線を向け、すぐに興味をなくしたように他に目をやる。
子供もいる、壁に寄りかかり、ぼんやりと通りを見ている。
そんな子がたくさん……。
怖い……。
どうしよう、どうすればいいの。
答えが見つからないまま、私はその部屋へ下ろされた。
壁の上の方に小さな窓が1つあるだけの部屋。
私の他にも攫われてきたと思しき女性たちと子供が数人。
もわっと汗臭く、それ以上に汚物臭い。
吐き気を耐えて部屋に入ると、空いている場所に座らされる。
「お前は未通女だろうから、そのまま売りに出そう。 良い値が付きそうだ、そら、そこの空いてる場所にでも座っておけ」
未通女か……生憎ととっくに済ませてるんですけどね、これでも過去に彼氏の一人や二人いたことあるし。
もっとも、そんなことは教えませんけどね、まかり間違って"味見"されても嫌だし。
入口のドアが閉められ、鍵をかけられる。
部屋が一層暗くなった。
空気だけじゃなく、雰囲気までどんよりと重い。
奴隷……ってどんな事をさせられるんだろう。
ダメだわ…性奴隷しか思い浮かばない。
でも高確率で、私はそっち方面の奴隷として売られるんだろうな。
あぁ、駄目だ、超ネガティブな事しか思い浮かばない!
体育座りした膝にオデコを付け、ぎゅっと目を閉じる。
浅く深呼吸し、一度、ゴンッと膝にオデコを打ち付けて気合を入れる。
駄目だ、ここで負けちゃダメだ。
まだやれる、まだ、終わったわけじゃない。
今できること……現状を確認しよう。
小柄な女性が3人と子供が5人、みんな疲れた顔をしている。
部屋の奥の隅っこに、桶が置いてある…多分トイレ替わり。
今できること……ポケットに入れていた小石を舐めて魔石を作っておこう。
この程度の小石なら30分も舐めていれば虹色魔石に変わる。
もしも、魔石が作れるってバレたら、それはそれでまずいだろう。
だけど、もしかしたら、必要になるかもしれない。
可能性があるならば。
小さい希望でも、ゼロじゃないなら、やらなきゃならない。
こんな世界に来て、身寄りも何もない私は必死じゃないと生きていけない。
できることはなんでもやっておこう。
地道にこっそりと魔石を作り続ける。
数個ずつまとめて舐めて10粒の虹色魔石を作り上げた、これをどう使うか……。
手のひらの中に小さな魔石を握り込み、膝から顔を上げた。




