6門兵
私はそんなにチビだろうか……いや、チビだよね。
わかっちゃぁいるんだ、147センチがチビだってことが。
だけどさぁ……。
「気をつけて行くんだよ、近場でも何があるかわからないからね」
顔見知りの門兵が小さい子にするように、腰を折って頭の位置を下げてそう言いながら、持っている装備まで確認してくるのは若干屈辱だ。
とはいえ、純粋な親切心からってことはわかっているので、営業スマイル…若干幼く見せるように努力しつつ、にっこり笑って門兵の質問に答える。
「水筒持ちました。 ハンカチも大丈夫。 はい、ナイフもあります。 お弁当も作ってもらいました」
人の良さそうな青年は、ウンウンと頷きながら確認してくれる。
それを、相方の壮年の兵がちゃんと門を守りながらも生暖かい目で見ている。
彼は気づいているみたいなんだ、私がこの青年よりも年上だということを。
その上で、青年が私を子供扱いするのが面白いんだろう。
悪趣味め……。
そもそも、この青年がまだ十代であることを教えてくれたのはおっさん兵だ。
その時"ニヤリ"と笑ったのを、私は見逃さなかった。
「遠くまで行ったら駄目だよ。 暗くなる前に帰ってくるんだよ」
指きりげんまんまでしそうな勢いで言ってくる青年の後ろで、おっさん兵が吹き出しそうになっている。
「…はい、行ってきます」
私も吹き出す前に、青年に手を振って分かれて町を出た。
青年が話す声が聞こえ、下品に吹き出す音が聞こえたからおっさん兵の笑い袋が決壊したのだろう、腹筋がつるまで笑うがいいさ。