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虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


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~未来へ~

 広くは無い庭で、十歳くらいの金髪の美少女がまだ幼いおかっぱ頭の少女を上手にあやしながら、楽しそうに遊んでいる。



「フィーリスちゃん、大きくなったねぇ」

 感慨深くそうつぶやけば、ソファで同じように外の様子を見ていた虎太郎さんが、まだまだ子供だよ、と意味深に応えた。……深く勘ぐっちゃいけない、きっと大人の包容力であの子を守ってくれているだけなんだから。

 八年の歳月で、彼もすっかり大人の容姿になっている。とはいえ、実年齢は十分おじいちゃんなのに、外見はまだ二十代だ。

 マコトさんが憤慨するのは当然だと思う……。


 今年生まれたばかりの息子を抱っこしたまま、台所の引き出しから巾着袋を持ってくる。

「はい、どうぞ。虹色魔石よ」

「ああ、助かるよ。ボクの方も渡しておく」

 そう言って、超回復薬や回復薬を大瓶で、その他こまごました薬を小瓶でくれる。

 物々交換でお互いを補っている。それにはマコトさんも含まれる。



 運命共同体なんてたいそうな名前はつかないけれど、同郷の人間であるというそれだけで、無条件に心強い。

 この世界にやってきて、結婚もして、子供もできたけれど、同じ日本人である彼らとの絆は別の次元で結ばれているように感じる。


 

「マコトさんが……ね」

 マコトさんから、とうとう日本に空間を繋げる事に成功したと、そう報告があったのは数か月前。

「彼女から聞いてるよ。大丈夫」

 虎太郎さんは何事もないような顔で立ち上がると、迷子のように立ちすくむ私の頭を撫でた。

「君は、迷う?」

 私の腕の中でノースラァトさんにそっくりな目をくりくりと見開いて見上げる赤子の頬を優しく撫でて、彼は目を伏せて問う。


「迷わない、です。私の家族はここに在るし。何より、虹色魔石が無ければ稼働しない魔道具だから、わたしが居なくなったら困るじゃないですか。これから先、もしこの世界に迷い込む人が居れば、帰してあげたいし……」

 もやもやとしたものを胸に溢れさせながら、一番正しいと思う答えを返す。

「……今更、もう十年くらい行方不明の私が帰っても、きっと困らせるし」


 うつむいた私の目から一粒だけこぼれた涙が、息子のおくるみに小さな染みをつくった。


「そうだね。ボクもそう思うよ」

 顔を上げれば、深く微笑む虎太郎さんが居る。

 きっと彼も同じ悲しみにたどり着いてる。

「ボク達はこの世界に居ようか。そして、迷子を向うの世界に返してあげよう。ボクはこれからも旅を続ける、迷子を見つけたら、君かマコトさんに預けにく――ごふっ」


「ちょっと! タロちゃん! あたし以外の女性と親密な空気を作らないでって言ってるでしょっ!」

 虎太郎さんが美少女のタックルを受けてよろける。

「マモリも、私以外の男をあまり見つめては駄目だ」

 後ろから来た大きな手が私の目を覆い隠し、耳元で低い声がいたずらっぽく囁く。


「お帰りなさい、ラァトさん」

「ただいま」

 お客さんが居ようが構わずに唇を近づける。

 毎日、私に愛してると囁いてくれる彼は、もしかしたら、何か気づいているのかもしれない。

 愛情でがんじがらめにして、私を離さないでいてくれる。


 だから、迷いはきっと一生消えないけれど、彼の傍で生きて行こうと決心した。






「愛してるよ、マモリ」












 ~完~

 最後までお付き合いくださった皆様! 本っ当ーにありがとうございましたぁっ!(土下座)



 2012.8.29より連載を開始し、中ぉれ……いえ、中だるみしつつの掲載でしたが、多くの人に読んでいただいて、本当に嬉しい限りです。

 途中「獣な彼女」が書籍化されて舞い上がったり。色々…(遠い目)、本当に色々あったこの2年でした。


 軽い気持ちで前作の「虹色魔石の生産者」の焼き直しをはじめて、何度過去の自分を詰ったことか!

 文字数増やせばいいや、行間をちょっと丁寧に埋めればできるよね。とか軽く考えていた過去の自分(馬鹿)に、あのザルのような物語の行間を埋めたら、話が破綻するのが目に見えてるだろ、途中から別の話になるにきまってるじゃないか、と小一時間説教したいです。


 しかしながら、登場人物も増え、元の作品よりも、小説として成り立っているんでないかい? なんて思ったりもして。

 なんにせよ、書き上げられてよかった。


 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。



2012.8.29 - 2014.11.7  こる

 

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