34.起床
なんていうか、よーく寝てすっきりしました!
久しぶりに思いっきり寝て、本当にすっきりさっぱりした。
ベッドで伸びをして、太陽の光りがサンサンと降り注ぐ部屋。
えーと、どこだっけ、ここ。
くたびれてはいるけど、服は着てるし。
だけど、なんか、顔がガサガサするし、歯も磨きたい……。
誰も居ない部屋で、大きく伸びをして、ベッドを降りる。
それで、ここはどこだっけ。
窓の外を見れば……高いな。
そうか、城か?
あー、そうそう、誘拐されて、なんだかんだであの部屋に連れて行かれて、あーあの人に会ったんだなぁ。
なんて言ったっけ? なんか、長い名前のおばさん。
………名前、思い出せないけどまぁいいか。
この隣の部屋に連れて来られてからの記憶が曖昧だけど、きっと眠かったからだろう。
それにしても、静かね……。
この時間なら何かしら音が聞こえてもおかしくないのに。
それに、誘拐されたのになんで、こんなに待遇がいいの?
大きくは無いが、ふかふかしている高そうなベッドから足を下ろす。
あのおばさんは、私の魔石を欲しがってたんだよね、確か。
中間管理職っぽい魔術師の人も、魔石を欲しがってたし。
ああそうだ、おばさん、確か、うちの両親の事聞きだそうとしてたね、故郷の場所とか、色々。
そういえば、なんで私あんなにあの人に心を許しちゃってたんだろう……。
あの綺麗な色の目を見てから……だったっけ?
ゾワゾワゾワ っと、悪寒が背中を走った。
そそそそ、そうかっ! そうかぁ…っ。
あれだ、目を見ろって言われたの、催眠術的な何かだったのかぁ。
怖いよぅ……。
あっ! そうだ、ノースラァトさん! ノースラァトさんと連絡、取れるかな!
慌てて自分の左の手のひらを見る。
あれ? なんだか、色が薄くなってる?
一抹の不安を感じながらも、ノースラァトさんに思いを馳せて声を掛けるが、うんともすんとも応答がない。
ほら、あれよね、向こうもこっちに意識を向けてないと駄目みたいだし。
四六時中、私の事を考えててなんておこがましい事は願えないし。
もう少し時間がたってから、また声を掛けてみよう。
不安に胸が押しつぶされそうなのを深呼吸してやり過ごし、今できそうな事を探してみる。
ここから逃げれないかな。
足音を立てないように注意しながらドアに近づく。
暫くドアに耳を付けて外の様子を伺ったけれど、どうも人の居る気配はない。
確かこの向こうは、衣裳部屋だったよね。
ゴクリ、と唾を飲み込んで、ドアノブに手を掛け、ゆっくりとそれを動か……ない。
鍵穴は無いけど鍵を掛けられてるんだろうか?
それとも、何かでつっかえてるとか。
どっちにしても、この出入り口は使えない、もうひとつの脱出口は窓だけど、ここ、高いんだよね……。
窓を開いて見回す。
外壁には装飾のための凹凸はあるけれど、フリークライマーではない私には無理だ。
がっくりして、ベッドに戻る。
手元にあの懐中電話(懐中電灯+携帯電話)があれば、マコトさんと連絡を取ることができるのに。
懐中電話はとっくに取り上げられて……あ、そういえば。
懐中電話の中に、虹色魔石、入れっぱなしだ。




