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虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


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33/50

33.安息

 フィーグレイス様は温かい腕で私が落ち着くまで抱きしめて、涙をハンカチでぬぐってくれた。


「もう、大丈夫かしら? マモリ」

 フィーグレイス様と目を合わせて名前を呼んでもらうと、心がフワッと暖かくなる。

「はい、大丈夫です。 ありがとうございました」

 ぎこちなく微笑み返すと、フィーグレイス様は満足そうに頷いてくれた。


 ふわふわとした心地よさのまま、隣室に案内される。


 フィーグレイス様と二人で軽食を取り、そのまま部屋にあったベッドを貸してもらうことになった。

「今日は疲れたでしょう? 何もかも忘れて、ゆっくりお休みなさい。 起きたらたくさんお話しましょう? マモリのご両親のこと、マモリの育った故郷ふるさとのこと、たくさん聞かせてね」


 おでこを合わせて目を見つめるのは恥ずかしかったけれど、フィーグレイス様の瞳は不思議に優しい色で、見ているだけで心が軽くなる。


「はい、たくさん、おはなし、したいです」


 抗いがたい眠気に抵抗しながら、笑顔を作って約束を繰り返す。








 パタリとドアが閉まる音を聞きながら、寝入る間際の心地よさの中でフィーグレイス様とのやさしい約束を反芻する。


 寝て起きたら、フィーグレイス様にたくさん聞いてもらおう。

 フィーグレイス様なら私の全てを受け入れてくれる、私の故郷が違う世界であることも、私が虹色の魔石を作れる特異体質であることも……ノースラァトさんにも言えなかった秘密もぜんぶ―――。




 ―――マモリッ!!!


「っ!?」

 突然響いた悲痛なノースラァトさんの声に、ぼんやりしていた頭が一瞬でクリアになった。


 ―――マモリッ!! マモリッ! マモリッ!!


 叫び続ける声は必死で。

 そういえば、ノースラァトさんが私を探してくれてたんだ、と思い出して、それから、マコトさんの事も思い出した。

 ああ、皆にもう大丈夫なんだって事を伝えなきゃ。

 眠いのを堪えて、なんとかノースラァトさんに意識を向ける。

「ラァトさん、ラァトさん。 私はもう大丈夫です」

 左手を口元に持ってきて、そう囁く。

 ―――マモリ! どこに居るんだ! そこがどこかわかるか!?

 大丈夫だと伝えたけれど、まだ焦った様子のノースラァトさんに、なぜだろう、胸がざわざわする。

「ここ、ですか? えぇと、多分ですけど、前にラァトさんに連れてきてもらった、お城の上の方にある部屋のどれかだと思います。 でも、本当にもう大丈夫ですよ、―――様が私を守ってくれるって約束してくれましたから」

 ―――誰と? 誰と約束をしたと!? 

 ノースラァトさんに聞き返されて、何度もフィーグレイス様と伝えようとしたけれど、なぜか名前が言葉にならなくて歯がゆい。

 ―――話せぬように魔法を掛けられたんだろう、無理はしなくていい。 今マモリは一人で居るんだな?

 確認されたので、休むように言われて一人でベッドに入っていることを伝える。

 ―――わかった、もう少しだけ待っていてくれ、


 大丈夫だよ、もう大丈夫なんだよ……だから、ラァトさん………そんなに心配…しないで……


 布団の暖かさもあって、ふっと意識が途切れると、ノースラァトさんの声が遠くなる。

 声が聞こえなくなるとノースラァトさんが恋しくなって、彼の腕の中で眠りたいな……いつも隣にある温もりが無い…のが……寂しい。


 あの、力強い、私を守ってくれる、腕の中で……

 フィーグレイス様がくれる安らぎとは違うけれど、暖かくって心地よいあの場所が恋しくなる、ノースラァトさんに会いたくなる―――



 ―――マモリ、マモリッ……





 ノースラァトさんの声が……子守唄のようで…安心して………ぐぅ――


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