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虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


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30.地下

 まっすぐ伸びていた通路の途中でハイリディーンさんは立ち止まり、右手側の石壁に手のひらをぺたりとくっつけ何事か唱えると、壁が砕けてその奥に横穴ができた。

「また隠し通路を作ったのか、ハイリディーン君」

「えぇ、また隠し通路を作りましたが何か?」

 私と上司の魔術師を、その隠し通路に通してハイリディーンさんもこちらへ入ると壁の横に手をつけて、また何か、もごもごと唱える。

 ゴゴゴゴ……と低い音がして、砕けた壁が再生された。

 も、もしかして、これも魔法?

 びっくりして見ていた私に気づいた上司魔術師が説明してくれた。

「これは独自魔術と言って、土系魔術の得意な彼女が独自につくった術だ。 そこらに居る平凡な魔術師には到底出来ない芸当だから、よく見ておくといい」

 すこし誇らしげに言った上司魔術師の後頭部から、また カッコーン といい音が鳴った。

「何を自分の手柄のようにおっしゃってるんですか、さっさと行きますよ」

「いいじゃないか、君と僕の仲なのだし」

 すねたように言う上司魔術師の後頭部から(以下略)。

「上司と部下、それ以外にどのような関係がありましたかしら?」

「………ありません」

「さぁ、先へ進みますよ」


 なんだか、上下関係が逆な気がするんだけど……余計なことは言わないで、おとなしくハイリディーンさんの後をついて歩く。

 斜め下方向に向かって伸びる細い通路は、人一人通るのがやっとの幅で、暗さも相まって息苦しい感じがする。


 10メートル程歩いた場所に、掘りっ放しの広めの空間が出来ていた。


「……また、君はこんな部屋まで作って…」

「問題ありません、ちゃんと周囲は地盤強化を施してありますから」

 言いながら、部屋に3つ敷物を広げる。

「いや、構造の問題ではなくて、城の地下に無断で部屋を作ることが問題な――「どうぞお寛ぎください、何もお構いはできませんが」――いやもういいよ…うん」

 ハイリディーンさんの勧めに従って、毛布に包まったまま敷物のひとつに座る。

 それにしても、ここってお城だったんだ……。

「馬鹿上司が迂闊にも漏らしてしまいましたが、ここは城の敷地内になります。 といっても、敷地の端にある"牢の塔"の地下で…ああ、今は囚人は上の方にしか居ないので平和なものですよ。 先程アナタに一時的に居てもらった場所は、近年では滅多に使われない、拷問階ですから、埃っぽかったでしょう? 掃除はしたのですけどね、こびりついた臭いはなかなか取れなくて、ごめんなさいね」

「ハイリディーン君、そんな話は後にしないかね?」

 引け腰で上司魔術師が提案すると、ハイリディーンさんはクイッと片眉を動かしたが、素直に応じて話を戻した。

「今回、貴女の時間を取らせていただいたのは、他でもない、虹色魔石をウチの部署にも売ってほしいってことなのよ」

「ウチは彼らのように派手ではないがね、それでも地道に国を支えているという自負はあるのだよ!」

 上司魔術師が言うことには、彼らは一系統特出型の魔術師で、ハイリディーンさんは土系、上司魔術師さんは治癒系の魔術のみを使う。

 基本的に魔術師はすべての魔術を使えるのだけれど、何の因果か一系統の魔術しか使えない魔術師も居る。

 人数は少ないし、使い勝手が悪いので内勤が多い。

 得意な魔術が必要な現場があれば手伝いに出ることは多々あるが、それでも助っ人要因でしかなく、肩身が狭い。


 ……うぅぅん。

 確かに肩身が狭いのは可哀想かもしれないけれど。

 かもしれないけれど……。

「えぇと、私があなたたちに魔石を売ったら、どうなるんですか? 魔石を使ってどんな事をしたい、とか、計画があるんですか?」

 聞き返すと、一瞬二人は顔を見合わせた。

「無論だよ、虹色魔石はどの系統の魔力にも適合する素晴らしい魔石だ。 僕を含め我々の中には適合する魔石の無い系統の者も多い。 そんな我等の魔力を補ってくれる、まさに画期的な魔石だ。 我等の為に在ると言っても過言ではないだろう?」

 だから、得た力で何をしたいのか聞きたいのだ。

 と、何回聞いても、"我等の"を繰り返す上司魔術師に、なんとなく理解した。


「申し訳ありませんが、私はちゃんと国に魔石を卸してます、卸した魔石は国の方でちゃんと管理して配分しているのだと思います。 だから、管理している人にちゃんと申請して、魔石をまわしてもらうようにしてください」









 地下に置いてきぼりにされました。

 人が好さそうな感じだったから、帰してもらえるかと思ったんだけど。


「そうだよねぇ、誘拐なんかしちゃう人達だもんねぇ…」

 手にした魔道具の懐中電灯だけが唯一の光源で、情けでこれだけ置いてってくれたんだけど、明かりがあると少し心強い。

 魔術で閉じられた石壁に背中をつけて、何度か大声で外に呼びかけてみたけれど、聞こえないのか、それとも周囲に人が居ないのか、誰も助けに来ない。


 きっと夜になったら、ノースラァトさんが帰宅して気づいてくれるとは思うんだけど。

 こんな場所に居るのわかるかなぁ……。

 あのヒト、勝手に掘ったとか言ってたし。


 膝を抱えてぼんやりしていたら、懐中電灯の明かりが消えた。


 魔石の魔力切れ


 真っ暗闇になってびっくりしたけど、手探りで懐中電灯の下のフタを外し、失くさないように慎重に中の魔石を取り出した。

 2センチくらいの魔石が5つ。

 服の裾で拭いてから、二回に分けて口に含み虹色魔石を作る。

 明かりが無いから完成したかどうかわからないので、ゴリゴリと口の中で舐めながらじっくりと時間をかけて作る、複数個でも1個作るのと同じ時間でできるから本当は5個を一度に舐めたいところだけど、無理だったので二回に分けた。

 3時間×2回…ほぼ半日作業。


 顎がだるい、暗い、うっすら寒い、おなかすいた、おなかすいた、おなかすいた!




 空腹を怒りに変えて、あの二人を罵倒しながらもう十分だろうというところまで舐めた魔石を服の裾で拭いて懐中電灯にセットした。


 えぇと、スイッチはどこだったっけなぁ。


 懐中電灯の外側を手探りして突起をスライドさせた。




 カチッ―――




 ようやく点いた明かりに胸を撫で下ろし、そして手の中から感じる違和感に気づく。



 ザ…ザザ…… ザザ……ザ…



 懐中電灯から鳴る音に気づいたとき―――





『…し? もしもし? もしもし、聞こえますか?』


 懐中電灯から聞こえる女性の声に、心臓が止まりそうになった。






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