表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/50

28.メッセージ2

 体格差のせいで色々と四苦八苦しましたけれども、無事、がった………げふんげふん、契ることができました。


 若干裂けてしまって出血したのですが、旦那サマごめんなさいそれは破瓜の血では無いのです。

 特に何も言われてはいないけれど、事後の甲斐甲斐しい旦那様を見ていると、ほんの少し心が痛みます。

 でもいいじゃない、旦那様だってしっかり経験値高いんだから、童貞って事はないでしょう、それならばお互い様ってもんですよね。

 ……取り敢えず、このひみつは墓の下まで持っていくって事で。





「……おはよう、マモリ」

 いつものようにノースラァトさんより早く起きて朝食を作っていると、すこし眠そうな様子のノースラァトさんが起きて来て私の後ろに立つと、スルリと腰に手を回してぴったりと背中にくっついてきた。

「おはようございます。 どうかしましたか?」

 情事明けの気恥ずかしさはあるものの、なるべく平気なふりをして少し振り返るようにしてノースラァトさんを見上げると唇をチュゥと吸い上げられた。

 い、一線を越えると距離感が変わりますね、は、恥ずかしいんですけどっ。

 そして、チュッチュ唇にキスを落としながら、不埒な手がさりげなく胸を触ってるんですが?



 え? え? えぇぇぇ!?











 そして、朝から疲れ切った新妻がここに……。

「…すまない」

 と言いつつ、台所からリビングを経てベッドに逆戻りを強行した旦那様が、ぐったりとした私の背を撫でながら白状してくれた事を要約すると。

 昨晩は私の体をおもんばかって早々に就寝し、朝私を腕の中に感じながら目覚めたかったのに、私はいつもどおりの生活をしていて寂しかった、朝日の中台所に立つ私の後姿を見て愛情が湧き上がり居ても立ってもたまらず朝から事に及んでしまった、と。

 ナニの合間合間に言われた言葉を要約するとそんな経緯でした。


 ベッドから起き上がる体力も使い切ってしまった私に、ノースラァトさんが蜂蜜のようなものをひと匙差し出した。

「体調を回復させる薬だ」

 差し出された薬を舐めるとリポビタン○の味がした。

 そして、あっという間に体の倦怠感やら、やんごとない箇所の痛みとかが消え去りました!

 びっくりしている私に、ノースラァトさんは『超回復薬』とラベルの貼られた瓶を見せてくれたんですが………ラベルが明らかに日本語です。

超回復薬これは軍の支給品で基本的には私用で使うことはできないが。 普通の回復薬ならば、民間にも流通している。 今度買っておこう」

 どうやらラベルの日本語で書かれた文字を読んでいるわけではなくて、ラベルのマークで判別しているらしい。

 町で売っているなら日中私が買いに行きます、と提案したがやんわりと却下された。

「一般の女性が買いに行く場所ではないから」

 え? 薬屋さんなんですよね?

 だがここで引き下がるわけにはいかない、同郷の人に会えるかもしれないのに!!


 交渉の結果、今度ノースラァトさんと一緒に薬屋さんに行くことになりました。


 すごい! 正直言って、魔道具師の熊川さんに会いに行けるかどうかわからなかったから、こんな近くで日本の人に出会えるなんて幸運にうれしくて泣きたくなる。

 





 それで、結果なんですが、薬屋さんは小売店で製造元は別でした。


 あの日から三日後、ノースラァトさんに連れられて街の裏路地にあるこじんまりとしたその店に私たちは居た。

 客が三人も入れば満員になるその店内の壁に作りつけられている棚に二列、埃をかぶったカラの瓶が並んでいた。

 あ……怪しい。

 薄暗く埃っぽい室内には不似合いな甘い匂いが充満し、店内に店員は居ない。

 最初は店の雰囲気に、ノースラァトさんの影に隠れて引っ付いていたけれど、一向に出てこない店員に段々店内にも慣れてくるとノースラァトさんから離れてディスプレイされていたカラ瓶を手に取る余裕も出てきた。

「えぇと…睡眠薬? こっちは、毒消し…毒って?キノコとか河豚ふぐとかかなぁ。 こっちは、目薬と、胃薬、酔い止め、痛み止め。 あ、回復薬あった!」

 順番にラベルを読んでいって、一番カウンターに近いところに回復薬があった。

 おぉう、値段が他の薬より桁が違う。

 万能薬だからか?

「へぇぇ! 嬢ちゃんこの文字読めるんか」

 店の奥から赤い長髪を頭の上の方で束ねた小柄な男性が、口元に巻いていた手ぬぐいを外しながらやってきた。

「すんません、ちょぉ、さっき来た客が媚薬をぶちまけちまってね。 うわ、まだ匂いが残ってやがるや、まぁ、こんくらいなら、ムラッとするぐらいなん……あの、店でいちゃつくのやめてくれる?」

 すみませんすみません、うちの主人がっ!!

 媚薬だというこの甘い匂いに触発された…と思われる、ノースラァトさんが私をマントの中に囲ってハグをしているのを見かねた店員が止めてくれた。

「回復薬をくれ」

「おぉ! にいさん太っ腹! 生憎と在庫が1つしかないけど、今取ってくるから、ちょい待ってて」

 回復薬1個15万円也

 高いっ! 薬が全般的に超高い!

 目薬1万円とかね、凶悪なお値段だから、下町で売ってても売れないと思うのよ。

 なんでこんな所にお店を構えてるのかなかぁ。


「中央に近いところだと、地下掘れんからな! あいよ、回復薬おまちどう」


 そうか私、口に出して疑問を言っていたか? 否! そんな事はないっ。

 自問自答していると、にんまり笑った赤い髪の店員さんが種明かしをしてくれる。

「いいとこのお使いさんがなー、良く言ってくるんよ、こんな辺鄙なところに居ないで、もっと中に来いって」

 手際よく回復薬の瓶を梱包しながら、赤い髪の店員さんがこぼす。

「そんなこと言われたてな、あそこは地下掘られん約束なっとるからなぁ。 薬の保管方法にゃ決まりがあってな、長く保管する場合は地下室じゃないと痛んだりするんよ。 ほい、できたー! お代は合わせて20万な!」

 合わせて??

 回復薬以外買ったっけ? あれ? でも確かに梱包されたサイズを見ると、瓶2つ分の大きさだわ。

 言われた金額を無言で支払う旦那様。

 5万分何を買ったのかな……棚を見回し、該当する金額のものを探していると、強引に顔を前に戻された。

 きょろきょろするのは失礼なのかな。

 でも、マントの中に囲われているっていうのも失礼じゃないんでしょうか?

 こっそりとマントから出ようとすると、腰に回された腕に阻まれる。

「それにしても驚いたなぁ、嬢ちゃん、"じゅげむ"さんの文字読めるんなー?」

「…じゅげむ?」

 聞き覚えのある日本語に反応した私に、赤い長髪の店員さんが頷く。

「お嬢ちゃん発音上手なー。 有名っしょ? じゅげむさんの薬。 馬鹿高いけど、良く効くしー。 良く効く上に、味がいかしてるし。 あ、そうそう、そういやお嬢ちゃんじゅげむさんのこの難解な文字読めとったけど、もしかして、じゅげむさんと知り合いなん?」

「た、たぶん、同じ故郷の人なんですっ! じゅげむさんって、どこに行ったら会えますか!?」

 勢い込んで聞いたとたん、腰に回されていた手に力が込められた。

「……マモリ」

「ぁ、ラァトさん」

 頭上から降ってきた複雑そうな声音に、はっとする。

 一瞬視線を交わしていたら、店員さんがそのマを切ってくれた。

「どこに居るかは知らんよ? ウチは委託販売させてもろてるだけやし。 やけん、年に一回位は薬売りに来てくれるし、今度来たらお嬢ちゃんのこと伝えとくか?」

 ぎゅっと両手を握り締め、即座に頷きたいのを堪えてノースラァトさんをうかがう。

 こんなに良くしてくれる彼に対して、こうして同郷を恋しがるのは失礼じゃないだろうか。

 だけど、ノースラァトさんはそんな私の頭をぐりぐりと撫でると。

「是非伝えてくれ。 今度手紙を持ってくる、それを渡して貰えるか」

「いいですよー。 他の人には内緒にしてくだいね」

 じゅげむさんの素性が知りたい人ってのは結構多くて大変なんだとこぼしながらも、店員さんは快諾してくれた。

「実はね、このラベルの文字を読める人が来たら教えてくれって言われてんだー」

 なるほど、だから日本語のラベルなのか!


 皆、どうにかして仲間にメッセージを残してるんだ。

 よし! 私も、虹色魔石にサインでも入れておくか!? 


※店員さんの言葉遣いはおおむね造語ですので、雰囲気をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ