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虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


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27/50

27.集計

 朝は、ノースラァトさんのぬっくぬくの腕の中で、二度寝の誘惑と戦いながら起床し。

 アイメッパ抜きでパンケーキもどきを焼き、ハムや野菜を挟んでサンドイッチ的な何かと牛乳をノースラァトさんと一緒に食べて。


「いってらっしゃい」

 玄関までお見送りする。

「……行ってくる」


 そして、チューです。



 

 ほっぺとかじゃありません、とても、普通ナチュラルに、唇にチューです。

 リップ音までさせて!


 初めてされた時はどれ程驚いたことか。

 呆然としている間に、ノースラァトさんは出勤して居なくなってるし。


 半日ぐるぐる悩んだ末の答えはコレだぁっ!



"これがこの世界の新婚家庭の朝の風景だ、これをしなきゃ新婚じゃないんだ"



 そうだよ、いくら偽装結婚だとしてもだよ、周囲にバレバレでは良くないじゃないですか。

 だから、ちゃんと擬態しなくてはいけないわけですよ。

 ほら、寝るときのベッドも一緒でしょ?

 やはり、形から入らなきゃだめなんですよ。


 うん、うん……(深く考えるの放棄)……さて、今日も魔道具の裏側を覗きますか。


 初めてこれを見たときは、全部同じことが書かれているかと思ったんだけど、どうも少しずつ違うみたいで。

 現在、色んな魔道具を開いて記述式をチェックしているところです。

 時々外れもあります。

 ランタンなんかは、どうやらこっちの人が作った魔道具らしく、記述式もこちらの言語で書いてある。

 便利機能付きの魔道具…風力調整付きの扇風機や追い炊き機能付きのお風呂なんかは熊川さんの作品であることから、単純なの=こっちの人、凝った作り=熊川さん、となるようです。


 そして、式を作ったのは熊川さんだけれども、書き写すのは他の人もやっているらしい……版権がどうの、著作権がどうのと書いてあって、そこらへんからの収入でかなり金銭的余裕があるらしいです、熊川さん……逞しいなぁ。



 電池切れで回収した魔石を口の中で転がしながら、メモを増やしてゆく。



 3日掛けて家中の魔道具をひん剥いてやった。

 作業場と化していた台所のテーブルをキレイに片付けて、調べた内容を時系列に並べる。


 熊川さんの記述式にはちゃんと作成年月日が表記されているので、それを元に並べていく。



 名前は熊川誠くまかわまことさんで私より20年前からここにいるらしい。

 職業は魔道具師で、かなりの印税収入がある。

 大陸の北にあるエイ・イレンという国に住んでいたが、どうやら引越したらしい、把握している限りでは二回程……。

 そして、どうやら結婚もしたらしい、結婚に至る懊悩も書かれていたけれど……きっと、この文字を読める人なんて出てこないと思って書いちゃったんだろうなぁ。

 他の人の日記を読む気恥ずかしさが半端ない。


 見る限り、熊川さんは他の日本人に出会ったことは無いようだけれど。

 たった20年の間に二人も日本人がこの世界に来ているってことは、もっと多くの人が来ていてもおかしくはないんじゃない?

 日本人だけってことは無いだろうし、もし異世界に渡るスパンが20年だとすれば、もっと過去から来ている人が居ないことはないと思う。

 どんなタイミングで、どんな理由で世界を渡ることになったんだろう。


 私がこの世界に来る…きっかけ………は、無い。

 少なくとも、普通に生活をしていて、本当に普通に平日の生活で、職場で伝票処理してた。

 それで、気づいたらこの世界に居た。


 そしてこの世界に来たからといって、勇者になる的な御役目も無く。


 特殊な魔石を作る特殊能力はあるけれども、その能力だって、普通に生活できていれば気づくことすら無かった。

 ……普通の生活で石を舐めるなんてこと、無いもんねぇ。







 私がこの世界に来た意味。


 そんなもの、あるんだろうか?






 部屋が突然明るくなり、その時になってやっとノースラァトさんが帰ってくるような時間なのだと気づいた。


「マモリ? 何かあったのか」

 

 明かりを付けたノースラァトさんは、ぼうっと顔を上げた私のところまで来ると、いつもの帰宅時の挨拶として唇にキスを落とし、それからテーブルの上に並べられたメモ達に気づき一枚を手にとった。


「これは……マモリの国の文字か? どこかで見たことが……」


「魔道具、熊川さんの作る、魔道具に使われてる文字、です」

 

 のろのろとメモ帳を片付ける。

 ノースラァトさんの持っていたメモも受け取って一つにまとめて服のポケットに突っ込んだ。


「マモリは…エイ・イレンの魔道具師長クマカワ・マコトと同郷なのか?」


 え………魔道具師長!? 熊川さん何やってるんですかぁぁぁぁ…!

 っていうか、半年離れた国にも知られるくらい有名人って!?

 はっ! あれだ! 熊川さんは"意味があってこの世界に来た人"に違いあるまい!


 ということは、私とは違う人種…ってこと?




「どうしたマモリ?」

 突然盛り下がりぐったりとテーブルに伏した私に心配そうな声を掛けてくれたノースラァトさんの手をがしっと掴み、その手を胸元まで抱え込んでノースラァトさんを見上げて懇願する。

「教えてください、のぉすらぁとさん」

 ノースラァトさんはどうやら、魔道具師長である熊川さんの事を知っているようだから、せめて知ってることを教えてもらおう!

 違う人種かどうか、判断するのはまだ先でいいよね、うん。

 だから、ね? 色々教えてね?


「………いくらでも。 だが、まずは夕飯にしよう……夜は、長い」


 あぁ! そうですね、自分の事ばっかりで、お仕事帰りの旦那様にご飯も用意しないでっ! 嫁失格……っ。


「はいっ! いま、用意しますっ、先にお風呂入ってもらってもいいですか?」

 お風呂は24時間いつでも入浴可能なので、時間稼ぎにそちらを薦める。

「ああ」

 ノースラァトさんはそう答えると、離そうとした私の手を取ると、指先に唇を押し付けた。

「すぐ、入る」

「あ、あの、まだご飯できてないので、できれば、ゆっくり入ってもらえますか?」

 正直に白状すると、小さく笑われて分かったとの返事と共にチュッと唇にキスを落とされ、私がクレームをつける前にお風呂に逃げ込まれた。


 チューのハードルが下がってる!

 間違いなく下がってるよ!



 あぁぁぁ、と、とにかくご飯だ、ご飯っ!















 なんとか有り合わせで夕飯を終え、居間のソファでお茶で一服。



「そ、それで、ですね。 色々と、教えてもらってもいいですか?」

 手の中のカップを弄りながら、おずおずと話を切り出す。

 ソファの背に回されていたノースラァトさんの手がピクリと反応し、そろりと私の肩を抱くように移動してきた。

 そもそも、いつもより座る位置が近いのも気になるんですが……。

 涼しい季節になってきたので、人肌は心地良いんですが、会話する距離としては近すぎる気がしますよぅ。

「ああ。……何から教えて欲しい?」

 だだだだ旦那サマぁぁぁ!? なぜ、そのように色気を含んだ低音を、耳元で!?

 違う意味合いに聞こえるから!

 ちょ、胸よ勝手にドキドキすんなぁぁ! 私が教えてもらうのは、熊川さんののののっ!

 動揺している間に、手の中のカップは取り上げられてテーブルに置かれ、その流れのままノースラァトさんの指が顎を捉えて少し上向けられて、んちゅー! っと。

 反射的に唇が緩んで受け入れてしまったのは、あれです、経験値があるがゆえの悲しいさがです!



 すっかり、口腔を舐られました。



 久しぶりのベロチューだった上、その、あのぅ、とても情熱的だったので、息も絶え絶えであります!

 そして、ノースラァトさん、手際がよろしい!

 いつの間にかソファに押し倒されてました!


「もっと…教えたい。 君に、君の体に」


 熱い息が耳朶に寄せられ、そこを甘咬みされると、体の芯がキュンキュンする…っ。

「っ…のぉすらぁと…さぁん……っ」

 喘ぐように名前を呼ぶと、すかさずマウス・トゥ・マウスで口が塞がれる。



 も、もう、この状態から、正気に戻るのは無理!

 第一、ここまで盛り上がって、誤解だなんて言ったら無粋極まりないわけででででっ!








 それに……イヤじゃないし……………









 ノースラァトさんの熱に翻弄され、一線を軽く跨ぎ越し、心身共に夫婦になりました。


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