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虹色魔石の生産者 EX  作者: こる.


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22/50

22.結婚

 そして、私達は女将さんの前に居ります。


「……それで? マモたん、アタシを捨てて、その魔術師サマのところに行くの?」

 私の両手を両手で包みながら女将さんが目を潤ませる。

「色々あって、居そ…じゃなくて、同居させていただく事になりました」

 散々お世話になった宿を出ることを申し訳なく思いながらも、決定事項を伝える。


「ん? 同居? なぁ、アンタ、こいつと同居・・するのか?」

 厨房から成り行きを見守っていた御主人が不審げに、私の後ろに保護者よろしく立っている隊長さんに声を掛けた。

「ああ」

 頷く隊長さんに、噛み付いたのは女将さんだった。


「ちょっと! 同居!? 同居って何よ! そんな事黙って見過ごせるわけないでしょ!?」

 その剣幕に驚いたのは私と隊長さんだった。

 女将さんは私を腕の中に囲い、更に隊長さんに食って掛かる。

「いくら魔術師サマでも、年頃の娘を嫁にもしないで一緒に暮らすなんて! 本気で言ってんじゃないわよね!?」


「年頃の、娘?」

 首を傾げる隊長さんに、厨房のカウンターに両肘をついて傍観している御主人が補足する。

「あー、そんな格好ナリしてるが、そいつ20歳だってよ」

「………二十歳?」

 隊長さんの素直な視線が私を射抜く。


 いえ、すいません、なんていうか、すいません。


 小さくなる私を、女将さんがぎゅうっと抱きしめる。

「服は子供服ですけどね! 脱いだら凄いのよ!」

 ちょ、女将さん? ななななナニ言ってるんですかっ!?

 そして、隊長さんの視線! じーっと見たって服の下なんか見えません……よね? まさか魔法で!? まさか! まさかねっ?

「本当か?」

 隊長さんが私に聞いてきたので、本当です、と肯定する。

 脱いだら凄い、の方じゃなくて、年齢が二十歳って方でね!

 それでもやっぱり納得出来ないようだったが、女将さんの剣幕に無理やり納得したようだ。



「少し、二人で話をさせてくれ」

 

 女将さんの好意で空いている部屋に入る。

 外で話をしようとしたら 目の届く範囲で! と女将さんに空き部屋に押し込められた。


 十中八九、ドアの外で聞き耳立ててますよね? 女将さん。


 隊長さんもそれには気づいているのか、無言のままチョークで直径1メートル程の円を床に描き、ドアの前に突っ立っている私に手を伸ばした。

 その手を取ると、円の中に引き込まれる。

「『音ヲ断ツ』」

 高音と低音の混じる不思議な声が唱えられ、チョークの白さが一瞬増した。


 これは、あれね、あの女装魔術師の彼がやった防音の魔法と同じもの、だよね?


 前回と同じく、やっぱり範囲が狭いのは、消すのが大変だからなのかもしれないな。



 2メートル位あるガタイの良い男性と、小さいとはいえ成人女性の間合いじゃないよね、直径1メートル。

「狭くて、すまない」

 えぇ、ほんとうに。

 呼吸も分かる程の至近距離。

 ギリギリ端っこに立つけれど、こけちゃいそうで怖いなぁ…とか思っていたら、支えるように腰に手を回された。

 今まで散々抱っこされたりとかしてるわけだから、今更なんだけれどもね。


 恥ずかしくて視線をよそに逃がす。


「本当に…20なんだな」

 念を押すように言われたわけではなく、自分自身に確認させるように呟いた隊長さんを見上げる。

 うぁ、やっぱり凄い身長差だわぁ。

「一緒に住むことはできないですよね、私、やっぱりこの宿に居ます、魔石はちゃんと国におろしますから、大丈夫です」

「いや……それでは駄目だ」

 駄目、なのか?

「結婚しよう」


 は?


「結婚すれば、私が君の後見となる。 そうすれば、多少の危険を減らす事ができるだろう」


 へ?


「それとも、好いた相手が居るのか?」


 いえいえいえ! これっぽっちも居ませんけれども! 日々の生活でイッパイイッパイで、恋愛のレの字もありませんけれど!


「ならば、私と結婚しても差し支えないな?」


 え、え、え? ちょ、ちょっと、それってアリですか?! 隊長さんはそれでいいんですか?


 慌てる私に、自分の方は何の問題も無いと言い切った隊長さんは、今後予想される危険を軽く私に説明してくれた。

 そして、その危険は結婚することで回避できるだろうということも。


「そ、それじゃ、仕方ない、ですよね」

 こんな簡単に結婚を決めるってことは、別れることも簡単にできるだろうし。

 もし隊長さんに好きな人ができたら別れたらいいか。




「結婚してくれるか?」


 最終確認に、小さく「はい」と返事をして頷いた。




 返事を聞いた隊長さんが、珍しく笑みを浮かべると、円の中に跪き私の左手を取り上げその手のひらの上に隊長さんの左手を重ねた。

「ありがとう。 契約の神よ、ノースラァト・ロンダットはニシムラ・マモリを生涯愛し、守りぬく事を誓う」

 隊長さんがそう言い切ると、シュッと何かが空気を割いて飛ぶような小さな音がして、それから重ねあわせた左の手のひらがほんのりと温かくなった。


 隊長さんがそっと手のひらを外すと、私の左手にうっすらとピンク色の矢のような痣が浮かび上がっていた、そして手を裏返した隊長さんの左の手のひらにも同じピンク色の矢の形をした痣が。

 お……おぉぉ? これって魔法?


「契約が神に認められたあかしだ」


 神様の承認なのか! え……ということは、だ。 離婚ってどうなるの!?

 離婚という言葉が分からなかったので、婉曲な言葉を使って聞いた。


「別れる? 何故、婚姻後に別れるんだ?」


 離婚、という概念すら無かった!!!

 背中を嫌な汗が流れます。


 性格の不一致とか、他の人が好きになったとか色々と離婚の要因はあるでしょう!? どうしても一緒に居られなくなったらどうするの!?


 離婚の概念の話を聞いた時に隊長さんに思いっきり不審な顔をされ、重ねて聞くことが憚られたので、あはははは~と愛想笑いでごまかしておきました。








 ………とととと、とりあえず今は、いいじゃない、その時がきたらその時よ!

 




 

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