17.移動……。
この町は二層構造になってましてね。
外側は民間人が住む普通の町で、お堀を越えた内側が高級住宅街でさらにその内側に立派な内塀があって、そこには出入りのチェックも厳しい内門がついていてその門を越えると。
「……城…」
いつも高級住宅街越しじゃちっちゃくしか見えなかったけれど、こうして、内門の中から見るとその大きさがとても威圧的ですね。
奥のほうに王様達が住んでて、手前のほうが政治的な場所? 庁舎的な? あと兵舎やなんかもある。
思いの外広い。
そこを、抱っこで……。
いや、違うんだよ、あれなの、なんとか逃げる為に、もう歩けないよーとか、おしりが痛くて馬に乗れないとか言ったの。
そうしたら、抱っこされたの。
それも、外の門からずっと。
やめて下さい歩きますからと懇願したけれど、遠慮するなの一言だけで降ろしてもらえなかった。
下ろしたら逃げられるとでも思ったんだろうか……いやだなぁ、50メートル走11秒台(※同年代の平均は9秒台)の私がそんなことするわけないじゃない。
鬼ごっこでは一番最初に捕まるし、なぜか足の早さは関係のないかくれんぼも最初に見つかる。
一言で言うなら、鈍臭い。
昔はその事実を受け入れがたかったけれども、二十歳になった今は受け入れています、達観したというやつです。
そんな風に脳内で逃避を繰り広げている内に、お城に到着しました。
恥ずかしくて隊長さんの肩に伏せていた顔を上げると、チラホラと好奇の視線を向けられているのを見つけ、また顔を伏せる。
隊長さんはまるで気にならないのか、広い歩幅で軍靴を鳴らしながらどんどん歩いてゆく。
階段を上がって、右へ曲がって、長い廊下をそのまま真っ直ぐ。
辿り着いたのは、シンプルなドアの前でした。




