13.移送
翌朝、魔術師の彼が居なくなった事に気づいた子供達が動揺し、人さらい達に女装していた魔術師の彼が居ない事がバレた。
もしかして、彼が居なくなった後をフォローすべきだったのだろうか。
だけど私が起床した時には既に子供達は混乱していたし、大人の方も動揺していたから、どのみちどうしようもなかったんだけど。
そういうわけで、現在移動中です。
大振りなナイフで脅されながら、みんなでまとめて移動です。
泣き喚いたりしたら容赦なく殴られます、泣き止まなかった女の子が一人殴られました。
大人二人が二人づつ子供の手を引いて、残った一人…殴られた女の子と私が手をつなぐ、泣きそうになる子供を睨みつけて…怖がられてもいい、泣いたらあいつらに殴られるんだから、私に怯えていいから、お願いだから泣かないで。
ぎゅっと小さな手を握って歩く。
遅れれば蹴られるから、引きずるようにしてでも子供を歩かせる。
嫌なのはわかる、お腹が減って力が出ないことも、怖くて泣きたくてしょうがないこともわかる。
だけどごめんね、ごめんね。
子供を引きずるようにしながら、子供が泣きそうになるのを怖い顔で脅しながら、早朝で人気のない道を歩く。
町の外に出たところに荷馬車が用意されていた。
もしかしたら、彼が居なくなったのと関係なく今日連れ出される予定だったのかもしれない。
幌の掛かった荷馬車に乗せられる。
結構ぎゅうぎゅう。
いや、ぎゅうぎゅうで良かったかもしれない。
否応なく身を寄せ合う、寄り添って小さな手を握る。
きっと、大丈夫。
魔術師の彼が、助けに来てくれる。




