海の底から
バッドエンド注意です。
寝る前に読まないでください。
青く澄んでいて、美しい海。
だが太陽の光が届かない海底は、ただただ暗かった。
そこには魚の姿さえもほとんど見られない。
同じ海でも上の方か下の方かで、天と地の差があるのだ。
そんな海底に―――ひとりの少女が居た。
精巧に作られた人形かのように美しい少女だった。
海に揺れる長い黒髪、そして白いワンピースを着ていた。
よく見れば海底にはたくさんの人が居た。
ざっと1000人は居るだろうか。
男、女、子供、老人・・・さまざまな人が居たが、全員うつむいて座り込んでいた。
うつむいているせいで表情は分からないが、皆一様に重い雰囲気を身にまとっていた。
でも少女だけは違った。
海面の方に顔を向け、必死にそこに向かって泳ごうとしていた。
でもどうやっても海底から足が離れることはない。
少女には地上でやりたい事があった。
お母さんお父さんに会いたい。
学校のみんなとまたふざけあいたい。
夢だった歌手になりたい。
そしてなにより、大好きな「彼」に会いたくて仕方がなかった。
いつかは地上に出られるかも知れない。
ほんの少しの希望をもって、少女は今日も海面を目指す。
きっと明日も、明日も
明日も-----。
10年前、白いワンピースを着た少女が誤って崖から海に落ちたというニュースがあった。
少女の恋人はそのショックで気が狂い、首をつって自殺したらしい。
少女はそのことを知らない。
ちょっと思いつきで書いてみました。
海の底はどんな感じなのだろうと。
悲しい小説はこれが始めてかもしれません。