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「僕はね、フォーミュリア。子供の頃に家族を火事で亡くしているんだ。僕自身もひどい火傷を負って。今ではこんな姿だけれど、もしかしたら見る人によればこの姿も、その前も変わりないのかもしれない。そんな僕を誰かが愛するなど、想像もできなかった。まして君に愛されるなどあり得ないよ。もし彼の言葉が本当となるのなら、僕にとってこれ程幸福なことはないよ。君にとっては迷惑な話だろうけど。思い返せば、僕は何かと理由をつけて君を側に置こうとしていたのかもしれない。君を初めて見た時、美しいと思った。何か訳有りの君に幸福になって欲しいと願いながらも、君を幸福にする誰かに君を渡したくないと思っていた。けれど、その僕のわがままが君を傷つけ、辛い目に遭わせる結果になってしまった。僕が君に執着さえしなければ、こんな結果にならずに済んだのにね」
力無く笑うテトにフォーミュリアは憤慨していた。
「何よ。自分だけ言いたい事を好き勝手言って。私にだって伝えなきゃいけないことがあるのに。それを・・・」
「ごめん。そうだったね。伝えることがあると君は言っていた。聞くよ。その話」
素直に謝罪するテトにフォーミュリアはさらにいらだった。
「私は王女だったのよ。ずっと塔に閉じ込められて、自由なんて全然なかったけれど。実の父親に自分の娘だと分かってももらえなかったけれど。それでも、私は貴方は王女なのよと、教えられて育ってきた。貴方が私を守ろうと戦った女性はクラティスと言って、私を今まで育ててきてくれた人だった。貴方が倒そうとしていた王様は私の父親だった。貴方が手にかけた兵士は全て私の国の民だったのよ。争うことない。私なら止められると思ったのは、傲慢だったの?何もできなかったのかもしれない。けれど、私は自分のやるべきことを精一杯やろうとしたのよ」
テトは自分のした事の重さを再確認し、「うん」とだけ言葉を落とした。
「貴方は私の育ての親を殺したのよ」
「ああ」
「貴方は私の父親を殺した」
「そうだね」
掴みかかっているか、すがっているのか分からぬままに、フォーミュリアはテトの胸に飛び込む。
睨む瞳に涙をためて、閉ざすまぶたは雫を落とす。
フォーミュリアはテトの唇を奪った。
「そんな人を私が愛する訳ないじゃない」
「でも、僕は言うよ。君に。フォーミュリア、愛していると」
「私は決して貴方を愛さない。だから、生きなさい。生きるべきよ、テト。テト・シンディアス」
そして、もう一度二人は唇を交わすのだった。
お疲れ様でした。
これでこの物語はおしまいです。
ここまで読んで下さった皆様に感謝と謝罪を。
ありがとうございます。
すみませんでした。




