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8/10

オチ狙いは計画的に

小等部一年、クラスは三十人。

初めての自己紹介タイムは、可愛らしく「好きなことをひとつ言いましょう」というルールだった。

 

緊張で顔を真っ赤にしながらも、みんな順番に発表していく。

(やっぱ一年生みんな初々しいなあ……って他人事みたいに見てるけど、私もめっちゃ緊張してる)


妙に気になる子たちが続々登場。


まずは、おどおど系男子。


「え、えっと……アルガス・ドロワっていいます……司祭の家の子で……本が好きです……」


(あれ?なんかすごくソワソワしてる……あ、この子、サラサ見てるな)


すかさず前の方からサラサが

「もっとシャキッとなさいませ!」と容赦ないヤジ。

(ああ、なるほど。幼馴染ポジだコレ)


 


続いて、また出ました典型的お嬢様。


「わたくし、シャーロット・エミューと申します。好きなものはお茶を嗜む事。尊敬しているのはサラサ様でございます。本日こうしてこの場に立てますこと、大変光栄に存じます。尚、わたくしも紅蓮魔法に適性がございますので、クロノさんを正々堂々と打ち破る所存でございます」


(え、えぇ~……私まだこの学校で何もしてないのに、もう二人目の宣戦布告!?)


 


お次は言わずと知れたボス、サラサ。


「バルバトス家のサラサですわ!好きなことは勝つことですの!目標はもちろん首席!私に立ち塞がるものは全員まとめて倒しますから、覚悟なさいませ!」


最後に私をガン飛ばしながら鼻でフンッときた。

(いや、マジでなんで私こんなに目の敵にされてるの??新学期デバフ発動してる??)


 


そして極めつけがコイツ。


「エルヴィン・フォスティエです。好きなことはお金を数えること……将来はお父さんの後を継いで大商会の主になる予定です」


(いや小1で金勘定!?詐欺師か!!頭良さそうだけど怖ぇよコイツ!)


 

ミーナは私の前で、元気に手を挙げる。


「私、ミーナ・ブランシュ。好きなことはかけっこ! 友達いっぱいほしいです! よろしくね!」


(やっぱ陽キャだなミーナ……オタクの私にまぶしすぎる)


 


――で、いよいよ私の番。


(やっぱトリだし……ここは何かオチが必要だよな。

 いやでも昨日目立ったし……どうせ静かにしててもまた変な目立ち方するに決まってるし。

 よし、だったらインパクトで押すしかない!)


立ち上がって、咳払い。


「えー、皆さまおはようございます!

わたくし、クロノ=ソーカ=シュナイダー=ド=ルシフェル=アルマ=ミストラル=ヴィヴィアン=レオナール=アンドロメダ――」



教室が一瞬フリーズ。



「……えー、長いので“クロノ”でお願いします!

好きなものは……いちごタルトと、お母さんの手作りハンバーグです!…………エヘッ!」



パチ……パチ……

……(無音)


ディディエ司祭がやや遠い目で、

「えー、個性的な方が増えて嬉しいですね……」


ミーナだけ「ぷっ」と吹き出しそうになり、

サラサは「意味が分かりませんわ」とバッサリ。

シャーロットは「なんて素晴らしい自己紹介でございます!」と謎の拍手。


(心の声)

(ウケるどころか空気が真空に……!この教室、宇宙空間かな……)


小さく縮こまりながら、

(もう二度とウケ狙いはしない……!)


――こうして、クロノの「伝説のスベり自己紹介」は、早くもクラスの語り草になったのだった。


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