初登校〜自己紹介はコミュ障の試練〜
聖堂院リュミエール・登校初日
朝、クロノは早めに登校した。
(初日から遅刻とかだけは絶対イヤだ……胃がきゅっとなる感じ、ほんと緊張する)
教室に入ると、席順が黒板に張り出されていて、運良く窓際の一番後ろの席だった。
(うわ、王道の“主人公席”……こういうの現実でもあるんだな。ちょっとテンション上がるかも)
サラサの席も調べてみると前の方の席で、ちょっと距離がある。
(今日だけは静かに過ごせそう……ありがてぇ)
前の席の女の子が明るく振り返る。
「クロノちゃん!昨日の試験、めっちゃすごかったね!私ミーナっていうの!よろしくねっ!」
(陽キャの波動……!でも話しかけてくれて助かる)
「あ、うん。ミーナちゃんよろしく。あれはたまたま運が良かっただけだし……。期待しないでね」
(目立ちたくない時ほど、なぜか引き強な人生バグ……)
「えー、でも本当に憧れる!わたし魔法苦手で運動しかできないし……クロノちゃんすごいよ!」
(リアルにモテるのは運動神経ある子なんだよな……主人公補正ってやつ、漫画の中だけでいいのに……。
てか、ミーナちゃんの声が大きい!目立つからやめてー!)
前の方からサラサの視線をビシビシと感じるが、絶対に目は合わせない。
(私は透明人間……空気……今は壁……)
――その時、ガラガラと教壇の扉が開く。
特に特徴もない普通の司教が前に立つ。
「えー、皆さんおはようございます。わたくし、このクラスを担当します――」
「ディディエ・ド・ベルナール=ヴァルトール=ランティエ=シャルル・ド……」
(特徴あった!長い!絶対一回で覚えられないやつ!)
「……まぁ長いので、“ディディエ”でいいです。」
(略し方に妙な親しみ……こういう人、嫌いじゃない)
先生の話はとにかく長い。半分くらい右から左に流れていく。
(もうちょい短くお願いしたい……これ、漫画だったらページめくり用の“コマ”だな)
「ってことで学校の説明はこれくらいにして、
それじゃあ、一人ずつ自己紹介してもらいましょう」
(来た!自己紹介イベ!友達いっぱい作りたい……けど……
昨日、目立っちゃったし、ここはバランスとって大人しめで行くべき?多分、窓際の一番後ろだから
最後ってのがまたプレッシャー……)
(噛みませんように……!つまずきませんように……!転生前のコミュ障スペック、ここだけは許してくれ!)
クロノは小さく拳を握り、そっと深呼吸した。