控えめチートで大丈夫?ドキドキ入学式
ー聖堂院リュミエール・入学式の日ー
聖堂院の大講堂には、小学1年生レベルの子どもたちが30人ずつ、6クラスも集まっていてもう、うるさいったらありゃしない。
教え込まれたはずのマナーもどこ吹く風で、見かねた母さんがイライラしているのを、私は冷や汗かきながら見ていた。
式は聖堂院で一番えらい大司教のご挨拶から始まったのだが……
誰も聞いてねえ。
しかも大司教は入れ歯がないのかフゴフゴしながら話してて、何言ってるかさっぱりわからない。
真面目なお母さんも、隠れあくび。
そんな空気を一気に引き締めたのが、小等部6学年の生徒代表・エリシア・フォン・ヴェルデンのキリッとした挨拶だった。
彼女は自己紹介もキビキビ、内容も聖堂院生活が楽しくなるような素晴らしいもので、
心の中で「私もこんな人になりたい」と素直に思えた。
私が彼女に感銘をうけていると母さんが教えてくれた。
「やっぱ凄いわね…あの子は有名人で、この都市からすぐ北にある王国のヴェルデン家の侯爵の娘なの。留学生だと普通なら生徒代表にはなれないけど、優秀すぎて仕方なくって感じね。確か弟もいたはず…」
そのヴェルデン家の父上が作った都市・ヴェルデンは、大陸で一番の城塞都市で、この都市があったからこそ、近隣である栄都セレスティアも栄えたみたい。
いつか絶対行ってみたいな、なんて思った。
そんなことを考えていると、
式がもう終わっていて
母さんが私に言った。
「さあ行きなさい。あなたの魔法は少し特殊だから、あまり目立たない魔法にするのよ。少し火が出るとか、その程度でいいわ。
終わるまで試験場の外で待ってるからね」
……あー、やっぱり気づいてるんだな、と思いながら、
「頑張る!」と返事をして、母さんと別れた。
マークと作戦会議した結果、いざ「魅せてやる!」の決意で試験場へ向かうのだった。