オタク女子、イシュ=バルト法国で転生令嬢やってます
ー栄都セレスティア・クロノの屋敷ー
この世界、思ってたより“ゆるくて不自由”だなって思う。
気づけば、転生からあっという間に六歳。
この六年でいろいろ分かってきたから、まずは家族の紹介をするね。
父は名家の五男坊。魔法の才能はあんまりなかったけど、今は教会の司祭としてマジメに働いている。
ふくよかだけど優しくて、昔はイケメンだったらしい。
母は火の魔法が得意なキャリア貴族ママで、美人だけどマナーには超厳しい。
弟のマーク(こっちは五歳で、ぽっちゃり)は毎日生意気にまとわりついてくる。
母は男の子が可愛いらしくて、マークを溺愛中。
私には何かと厳しいくせに!
次に、この世界のこともちょっと紹介。
──この大陸には三つの主要国がある。
◆【イシュ=バルト法国】
信仰と教会の国。
この国では魔法は“神の祝福”とされいている。ポツポツと教会が点在してて、朝には鐘の音とお祈りタイム。皆、神様にそれなりに感謝して、穏やかに生きてる感じ。
それで私が住むのは、この法国の北東の端っこにある
栄都セレスティアという都市。
そこの聖堂院リュミエールという教会を中心に、
朝は鐘と祈りが街に響く。
子供たちは小さい頃からこの教会の神聖学校に通う。
私も“貴族の娘”として、今春から教会デビュー。
正直、異世界の学校にはドキドキしてて、友達できたらいいな〜って思ってる。
◆【アーク王国】
大陸の中央にある国で、“平和と自由”を掲げているけど、実際は腐った貴族ばかりで、“血筋”がすべてを決める。
ガチガチの格差社会で血筋がなければ農民コース。
法国は信仰で王国を救ってあげようとしているみたい。
どこもかしこも「生まれガチャ」の闇に覆われてる。
◆【ゼルファス帝国】
北にある、“力こそ正義”の軍事国家。
兵士は階級ごとに命の価値が違い、奴隷制度も当たり前。
町並みは闘技場や要塞と冒険者が通うダンジョンの為の施設が入り混じった無骨な雰囲気らしい。
一日でもいたら胃がやられそう。
(奴隷なんて現実だったら完全アウトで人権団体が即炎上案件)
この三国はお互い牽制しあいながら、かろうじて平和を保ってるらしい。
正直、私の“オタク脳”から見れば、
どの国も設定盛りすぎてて笑うしかない。
努力より血筋。
現代日本の生まれガチャですらしんどかったのに、ここは何倍も露骨。
……でも、そんな世界でも、私は割と“順応”できてる自信ある。
現世の趣味知識(FPSと巨大メカがメイン)
は封印中だけど、やるときはやるのがオタクの矜持。
屋敷の窓から青空を見上げて、心に決める。
(今度こそ、“ちゃんと生きてみる”って)
最後に、
最近弟とこっそり“実験”も始めたんだ。
実は、魔法はまだ使えないけど、
私には転生者らしい“チート能力”があるっぽい。
このチート、まだよくわかってないけど、
何かを思い浮かべると、たまに地球の道具が手元に出てくることがある。
ただし回数やタイミングはランダムで、自分でも制御できていない。
この秘密はマークにだけバレてて、二人でこっそり研究中。
「姉ちゃん、今日も弾ける飲み物出してみてよ!」
「無駄遣いはダメ!回数制限あるんだから!」
そんなやり取りをしつつ、私は今日も新しい人生の攻略法を模索している。
生意気な弟に言い返されつつ、誰にも言えない秘密を抱え、マークと二人で秘密の研究を続けていく――
【ここからが、クロノ=ソーカの“二周目の人生”本番、です。】