弟マークとポテチと決意
放課後。
家に帰ると、マークは床に寝転がってゲーム機を握りしめていた。
横にはポテチの袋と、炭酸シュワシュワの瓶。
「くっそー! またラスボスにやられたぁあ!」
大声をあげてポテチを口に放り込み、炭酸をゴクゴク。
げっぷ。
……うん、相変わらず。
「マーク、ちょっと真面目な話がある」
私が声をかけると、マークはゲームを一時停止してこちらを見た。
「え? どうしたの、姉ちゃん」
その顔に、私は今日のことを話した。
――ミーナの目の上のアザ。
嘘の笑顔。
転んだなんて絶対ありえないこと。
マークの笑みがすっと消えた。
ゲーム機もポテチもその手から滑り落ちる。
「……それ、やっぱり家族にやられてるってことだよね」
私は小さく頷いた。
「でも証拠がない。本人は『転んだだけ』って言い張るし、大人たちも信じてくれないと思う」
しばし沈黙。
マークは顎に手を当て、考え込む。
数秒後、いつもの子供っぽい笑顔じゃなく、どこか鋭い光を宿した目で言った。
「じゃあ、証拠を作ればいい」
「えっ?」
「ミーナの家に隠しカメラを仕掛けるんだよ。
姉ちゃん、この前の星を映し出すやつみたいなの現界具現で作れるでしょ?
録画して、大人がいる所で映し出せばいい。神様の奇跡だって思われるさ」
私は呆気にとられてマークを見た。
……普段は炭酸とポテチでだらけてるくせに。
やっぱりこの弟、恐ろしい子。
そのとき、窓の外から教会の鐘の音が聞こえた。
(……そうだ。近くの教会には神父の息子アルガスがいる。教会で礼拝のときに証拠を突きつけられれば……!)
私は席を立った。
「マーク、今回は一人じゃ無理だ。……アルガスに相談してみる!」
胸の奥で小さく、けれど強く呟いた。
(ミーナ……絶対に助けるから)