表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/18

商人の見た奇跡

「金を出せ、こらぁああ!」

「ぐずぐずするな、命が惜しけりゃ財宝置いてけ!」


強盗団の怒号が石畳の通りに響き渡る。

エルヴィンと、その父ちゃんが店の前で顔面蒼白。ガタガタ震えてるし。……いや、あの父ちゃん大商会のボスでしょ? もっと威厳とか見せてよ。


そんなこと思った矢先――。


もくもくもく……


突然、視界を白い煙が覆った。


「な、なんだ!? 剛岩魔法か? いや、騎士団の突入か!?」

強盗団がざわつく。


(へっへっへ。違うんだなー。地球製スモークグレネードでーす!)


さらに上空から「ぶぃぃぃん」と音が響いた。

見上げれば、黒い小型機械――マーク操縦のドローンが飛来。


そして爆音。


「たんたかたんたかたかたったらーん♪」


よりによって『鋼鉄戦艦ヤマダ』。

あの軍歌(?)が商店街に大音量で響き渡った。


「ひ、ひぃ!? な、なんだあの鳥みたいな化け物は!」

「空から歌う魔物!? 魔獣か!?」


強盗も商人も、みんな口をポカン。

(うわー、完全にカオス。ドローン一個でこのパニックっぷり。マーク、恐ろしい子……)


そしてドローンのハッチ(※もちろん即席現界品)から、閃光弾がぽとり。


――ぴかーーーーーーーん!!


「ぎゃああああっ! 目が! 目がぁぁあ!」

強盗団も野次馬も、全員光にやられて目を覆う。


直後、耳元のイヤホンから無線が飛んだ。

『今だ! 姉ちゃん!』


(我ながら……恐ろしい弟よ……)


私はすでに向かいの建物にポジション取り済み。

構えるのは――現界具現したスナイパーライフル。


「ワンショット、ワンキルっと……」


パン! パン! パン!


狙うは急所じゃなくて足。

膝や太ももを的確に撃ち抜いて、強盗団は転げ回る。


(FPSだけじゃなく、サバゲーで鍛えた私のAIMを舐めんなよ! どんなもんじゃい!)


もだえ苦しむ強盗団。

そのタイミングで、騎士団が駆けつけてきた。


「な、何事だ!? 魔法か!? 誰がやった!?」

キョロキョロ見回すけど、全員閃光弾で目をやられてるから何も見えてない。


「空飛ぶ……鳥が……歌を……」

「いや、楽器を奏でてた……?」

商人たちの証言もカオスすぎて、完全にオカルト事件扱い。


そこへ戻ってきた母。

「はぁ……なんとか無事だったのね。……あなたたち、帰らずにここにいたの?」

心配そうに私とマークを抱き寄せた。


「ごめんなさい、二人にして……」


マークは平然とパンをもぐもぐ。


「母ちゃん。さっきの袋、スラムの人が持ってっちゃったよ。買い直しだね」



「…………」



忘れてた。

買い物袋、完全に放置してた。


母と私、そろって頭を抱えるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ