星空と暴走令嬢たち
ロッカーから取り出したのは――マーク推薦の“秘密兵器”プラネタリウム。
水晶っぽいドーム付き、色変え機能&リモコン付き。中敷を変えれば恐竜でも宇宙でも映せる万能選手。
机に夏の夜空モードでセット。リモコンを手に隠し、魔力をこめるフリしながらスイッチON!
回転するドーム、魔導館いっぱいに広がる星空。黄色と白の光がきらめく。
「おおおー!」先生まで目を見張る。
アルガスが珍しく興奮して叫ぶ。
「これって英雄レオニスの星座だ!」
ディディエ司祭まで「神の導きかもしれません……」と神妙な顔。
(いやただの夏の大三角なんですけど!?)
「流れ星だ!」
――プラネタリウムのオマケ機能が作動してただけ。
「まさか流星まで操れるなんて!」と周囲がさらに勘違い。
勝負は完全に空気、星空パーティー状態に。
……横でリリス&シャーロットのプライドがメラメラしだす。そして
「私たちもやる!」と”暴走”モードに!
結果――リリスは自慢の長い金髪が氷と水でバリバリに固まり、肩から腰までびしょ濡れ。
真っ青な顔で「さ、寒……」と小刻みに震え、ついに鼻からツーッと情けない鼻水が。
普段の気品ゼロ、ただのずぶ濡れ雪だるま状態。
一方シャーロットはというと、最後の魔力集中でドカンと小規模爆発。
ふわっと舞った煙が晴れると――艶やかな赤毛は爆風でふくらみ、見事なアフロヘアに。
しかも焦げた匂いがほのかに漂い、額には黒いススまで。
口を開けて呆然と立ち尽くすその姿は、もはや令嬢ではなく駄菓子屋の爆竹被害者。
星空鑑賞で静まり返った魔導館、二人の失敗した魔法の響く音に振り向く。
誰かの「ぷっ……」という笑いが切り裂いた瞬間――
ドッと大爆笑の渦! 地面を叩く生徒、涙を流して転げ回る者、ミーナは腹を抱えて「ひぃ〜」と声にならない声。
二人は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「こんなはずではありませんでしたのにーーーっ!!」
声をハモらせながら、控室へ全速力で逃げ去っていった。
その背中に、まだ笑いと拍手がいつまでも追いかけてくる。
(……勝負って、なんだっけ? いや、これもう勝負じゃなくてコントだろ)