双属性疑惑?魔道館のきらめき対決
みんなが一斉に魔力コントロールに取りかかると、魔導館の中はまるで万華鏡。
紅蓮(赤)、蒼氷(青)、翠嵐(緑)、剛岩(茶)の四大属性だけかと思いきや――
「あれ、ピンクいるぞ……水色に黄色、紫まであるし……」
色味や濃さは人それぞれらしく、予想以上にカラフルだ。
その中でもひときわ目を引くのはシャーロットの紅蓮色。色の鮮やかさもさることながら、とにかくデカい。
一方のリリスも相当すごいはずなんだけど、この魔導館は壁も床も青。リリスの魔力の色は背景に完全同化し、まるでカモフラージュ。
珍しく「ぐぬぬ……」と大人しくしており、なんとか目立とうと形を変えたり回転させたりしているが……完全に背景色負けである。
そんな中、シャーロットがこちらを見てふわりと笑う。
「クロノさんはなさらないのですか? 先日の試験でのご活躍、ぜひ拝見したいのですが」
ミーナの魔法を「すごいね〜」とほのぼの眺めていたところに、横からズバッと入ってくる。
さらにミーナまで「クロノちゃんのも見たい! きっとすごいんでしょ!」と全力笑顔で声を弾ませる。
(ミーナ……声でっか! 本人が自覚ないから余計タチ悪いんだって……!)
案の定、周りの視線が一斉にクロノへ。
観念したクロノは、マークと仕込んだ秘密兵器――レーザーポインターをそっと取り出した。
手のひらに隠し、魔法っぽい所作をしながらスイッチをオン。《マークと練習済み》
――ポツン。
遠くの壁に、小さな“緑”の点がくっきり浮かんだ。
小さいのに妙に存在感のある光。みんなの魔力とは質が違う。
「おお……」とどよめく中、ディディエ司祭が感心したように言う。
「ほう、翠嵐属性ですか。魔力をまったく感じさせず、遠くまでぶれずに圧縮し、魔障石の壁に当てても消えない。圧縮、分離、維持、すべて揃っています。これは素晴らしい技術ですね!」
まさかの絶賛。
(ちょ、やべぇ……マークと赤と緑で実験してて、間違えて緑持ってきちゃっただけなのに! 地味で終わると思ったらまさかの大評価……また目立っちゃうじゃん!)
リリスが悔しそうに口を開く。
「あなた、紅蓮魔法だけではなかったのですね……まさか双属性持ちだったなんて……」
その表情は、ほんの少し自信を削がれたようにも見えた。
すると、それを見ていたシャーロットが手を挙げる。
「ディディエ司祭、魔力水晶を使ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ。魔力水晶は扱いが難しいですが、鍛錬には最適です。使いたい方には貸し出します」
シャーロットはギラリとクロノを見据えた。
「クロノさん、双属性もちで素晴らしい技をお持ちなのは理解しました。しかし、皆さまとは違う小さな光だけで勝ち誇るのは、少々嫌味ではありませんか。――私と水晶で勝負なさってください。魔力量には自信があります」
(ええー……リリスだけじゃなくて、こっちも勝負挑んでくんの!? やだーー!)
心の中で悲鳴をあげてると――
「クロノさん! 聞いてますか?」
ビクッ。「はい! きいておりましゅ!」
ディディエ司祭はニコニコしながら「怪我はないようにお願いしますよー。実体化は禁止ですからね」
(マジかよこの司祭、意外とノリノリじゃねーか……止めろや)
シャーロットは「では、自宅から持ってきたので更衣室から取ってきますわ!」と颯爽と退場。
私はこっそりミーナに聞く。
「てか魔力水晶ってなに?」
「ほら試験の時のやつ。台座の上にある占い師っぽい水晶だよ。貴族の家ならだいたい置いてあると思うよー」
(あー……マークが光らせてたの見たことあったわ)
やがてシャーロットが戻ってきて、水晶を机にドン。念じると――
ぼっわぁああ! 真っ赤に輝く水晶!
「おお〜!」と生徒たちがどよめき、
先生も「はい結構です、お上手ですね」
シャーロットは満足げな笑みで私を見てくる。
「さあ次はクロノさんですね。私の様にド派手なのをお願いします。」
「はーい……」